イソチオシアン酸エステル(読み)イソチオシアンサンエステル

化学辞典 第2版 の解説

イソチオシアン酸エステル
イソチオシアンサンエステル
isothiocyanic ester

イソチオシアナートともいう.R-N=C=Sの一般式をもつ化合物の総称.チオシアン酸エステルR-S-C≡Nの異性体である.イソチオシアン酸H-N=C=Sの水素を有機基で置換した構造をもつ.アリルエステルはカラシ油ともよばれ,黒カラシの種子ワサビの根のなかに配糖体として含まれ,それが酵素により分解されて生じる.また,ベンジルエステルは金蓮(れん)花の果実や花の精油中に存在する.チオシアン酸エステルを加熱転位させるか,各種の第一級アミンと二硫化炭素との反応物を,硝酸銀または塩化水銀(Ⅱ)で分解するか,または,第一級アミンとチオホスゲンから得られる.一般に,水に不溶の無色の液体または固体であり,カラシ油に似た刺激性の臭いをもち,催涙性がある.水により分解してアミンを,アルコールと反応してチオウレタンを,カルボン酸と反応してアミドを,アミンと反応してチオ尿素誘導体を生じるが,その反応性は酸素類縁体であるイソシアン酸エステルR-N=C=Oよりも劣る.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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