アーリヤ・サマージ(読み)あーりやさまーじ(英語表記)Ārya Samāj

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アーリヤ・サマージ」の意味・わかりやすい解説

アーリヤ・サマージ
あーりやさまーじ
Ārya Samāj

近代インドのヒンドゥー教改革運動の団体。1875年ダヤーナンダ・サラスバティーボンベイ(現ムンバイ)に創設。この団体は当時のヒンドゥー教の堕落を痛撃し、またキリスト教進出によるインドの西欧化を慨嘆し、ベーダすなわちインドの古代精神に帰れと主張した。偶像崇拝祖先崇拝を無用の迷信であるとして排撃したが、業(ごう)や輪廻(りんね)の伝統思想には理解を示し、急進的な改革を避けた。さらに、婦人地位向上や教育の普及には大きな功績を残したが、カースト制度に対する態度はおおむね妥協的であった。多数の有力者の支持を得て1921年には会員数46万人となったが、その後急速に勢力が衰えた。

[増原良彦]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アーリヤ・サマージ」の解説

アーリヤ・サマージ
Ārya Samāj

ヒンドゥー教徒の宗教・社会改革運動組織。アーリヤ協会ともいう。1875年にダヤーナンド・サラスワティーが創設。「ヴェーダに帰れ」という復古主義的なスローガンのもとに,カースト制度批判,女性の社会的地位の向上,幼児婚廃止などの運動を推進し,教育・医療施設を各地につくった。他方では,ヒンドゥー至上主義的な傾向を持ち,ムスリムとの宗派対立を高める原因をつくった。北インドの商人・事務員などの中間層下層を支持基盤とした。民族運動家のラーラー・ラージパット・ラーイも指導者の一人。現在も活動を続ける。

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百科事典マイペディア 「アーリヤ・サマージ」の意味・わかりやすい解説

アーリヤ・サマージ

アーリヤ協会とも。近代インドのヒンドゥー改革運動団体。19世紀末にボンベイ(ムンバイ)で設立,復古主義的な宗教・社会改革に取り組み,〈ベーダに帰れ〉をスローガンとして大都市を中心に展開,現在に至る。各種の社会運動にも取り組む。のちのヒンドゥー至上主義運動の源流となった。

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