デジタル大辞泉
「んす」の意味・読み・例文・類語
んす[助動]
[助動][んせ・んしょ|んし|んす|んす・んする|んすれ(んすりゃ)|んせ(んし)]《尊敬の助動詞「しゃんす」の音変化》助動詞「しゃんす」に同じ。
「必ずそれまで短気な心持たんすな」〈浄・卯月の紅葉〉
んす[助動]
[助動][んせ・んしょ|んし|んす|んす|んすれ(んすりゃ)|んせ(んし)]《丁寧の助動詞「ます」の音変化》助動詞「ます」に同じ。
「一盃つぎんした」〈洒・甲駅新話〉
[補説]近世の遊里を中心に用いられた。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
んす
〘助動〙
[1] (助動詞「しゃんす」の変化した語。活用は「んせ(んしょ)・んし・んす・んす(んする)・んすれ・んせ(んし)」。→
補注(1)(イ)。四段・ナ変動詞の
未然形に付く。→補注(1)(ロ)) 尊敬の意を表わす。さんす。
上方を中心に男女ともに用いた。→補注(1)(ハ)。
※
浮世草子・好色万金丹(1694)一「大夫様のたしかに請け取らんす事じゃ」
※
浄瑠璃・冥途の
飛脚(1711頃)中「川様、嬉しう思はんしょ」
[2] (助動詞「ます」の変化した語。活用は「んせ(んしょ)・んし・んす・んす・んすれ・んせ」。→補注(2)(イ)。動詞・助動詞の連用形に付く。→補注(2)(ロ)) 丁寧の意を表わす。ます。いす。
江戸時代、主として、遊里の女性によって用いられた。→
ありんす。→補注(2)(ハ)。
※浄瑠璃・傾城酒呑童子(1718)三「局へごんせ、しっぽりと知る人になりんしょ」
※
咄本・鹿の子餠(1772)
十字「そんなら書きんすによ」
※
洒落本・穴可至子(1802)「わっちがそばに居んすりゃア、さまざまな事を言なんして」
[補注](1)((一)について) (イ)
仮定形「んすれ」は、
助詞「ば」の付いた「んすれば」の変化した「んすりゃあ」の形でみられる。(ロ)四段・ナ変以外の動詞には「さしゃんす」の変化した「さんす」が用いられ、この「んす」と対応する。(ハ)もと遊里で用いられた語であるが
元祿(
一六八八‐一七〇四)頃には一般の女性も用い、さらに、男性にも用いられるようになった。
(2)((二)について) (イ)江戸で使われた例で、未然形に「んし」の形をとったものが少数例みられる。「モウききんしない」〔洒落本・郭中奇譚‐弄花巵言〕、「はらたてアしんしん」〔洒落本・郭中奇譚‐弄花巵言〕。また、仮定形「んすれ」は助詞「ば」の付いた「んすれば」の変化した「んすりゃあ」の形でみられる。(ロ)江戸で使われた例で、上にくる動詞の連用形がイ段音の一音節であるときは、その動詞との間に「い」を加えることがある。「昼まってゐいんすにへ」〔洒落本・
遊子方言‐しののめの
ころ〕、「おまへの所へ来
(きゐ)んしてから」〔洒落本・遊子方言‐しののめのころ〕。(ハ)はじめ上方の遊里で用いられたが、江戸中期頃から江戸の遊里、主として吉原で盛んに用いられた。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報