さしもぐさ

精選版 日本国語大辞典 「さしもぐさ」の意味・読み・例文・類語

さし‐もぐさ

〘名〙
① 植物「よもぎ(艾)」の異名させもぐさ。多く和歌によまれた。《季・春》
古今六帖(976‐987頃)六「あぢきなや伊吹の山のさしもくさおのが思ひに身をこがしつつ」
② (「新古今集‐釈教」の「なほたのめしめぢが原のさせもぐさわがよの中にあらんかぎりは」の歌が清水観音の衆生済度の誓を述べた作と伝えられたところから) 観世音菩薩に救われるべき一切衆生(いっさいしゅじょう)をたとえていう語。この世に生きる人のすべて。
※詠太神宮二所神祇百首和歌(1468頃)「只たのめしめぢか原のさしもくさ我世の中に有らんかぎりは。此さしもぐさは人の惣名と也」
③ 植物「ふとい(太藺)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕
[補注]①は古来、単に雑草をさすとする説や、蓬(艾)の異名とする説が対立していた。しかし、和歌において平安中期以後「もぐさ」の縁語として「燃ゆる」「思ひ」(「火」を掛ける)「こがす」が見られ、典型的な歌語であるとされるところから、今では、伊吹山を名産地とする蓬の異名と考える説が定着している。

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