ささやき竹(読み)ささやきだけ

改訂新版 世界大百科事典 「ささやき竹」の意味・わかりやすい解説

ささやき竹 (ささやきだけ)

物語。1巻または3巻。作者不詳。成立は室町時代か。2系統の作品がある。都(または河内)の左衛門尉の娘に懸想した鞍馬寺(または河内の毘沙門(びしやもん)堂)の僧が,竹筒を用いて親に偽の夢告をささやき,娘をひそかに寺へ運ばせるが,娘は途中で関白(または宮内少輔(くないのしよう))に助けられ,牛とすりかわる。寺でははねまわる牛に大騒ぎとなり,娘は助けられた貴公子と結ばれて栄える。堕落僧の失敗を風刺した作といえる。簡略な河内系を増補改変したのが都系の作品。同型の説話が,《雑談(ぞうたん)集》《鷲林(じゆりん)拾葉集》《地蔵菩薩霊験記》に載り,説法の座で語られる話であったらしい。
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百科事典マイペディア 「ささやき竹」の意味・わかりやすい解説

ささやき竹【ささやきだけ】

室町時代の物語。娘に恋慕した鞍馬寺の僧が夜,その親に,竹筒を使って,夢告を装ってささやきかけ,娘を長櫃に入れて鞍馬へ送るようにいう。娘は途上で関白によって助け出され,代わりに牛を入れたので,僧坊は大騒動となる。無住の《雑談集》巻5に〈古き物語,人ごとに知れる事〉としてほぼ同様の説話が記され,《地蔵菩薩霊験記》巻8-3や《法華経直談抄》《一乗拾玉抄》などにも見える。さらには町の若者の話に変容して落語《お玉牛》まで続く話型である。

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