X線透視(読み)えっくすせんとうし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「X線透視」の意味・わかりやすい解説

X線透視
えっくすせんとうし

X線検査の一種で、人体にX線を照射して得られる情報を光学像に変換し、リアルタイムに視覚的に観察する方法。光学像への変換にはX線テレビジョンシステムが用いられており、遠隔操作装置と連結させることで検者の被曝(ひばく)の軽減が図られるとともに同時に多人数で観察可能で、診断精度の向上だけでなく医学教育の面でも有用な方法となっている。臨床的なおもな用途として造影剤を用いた造影検査、穿刺(せんし)術および整形外科領域の整復術のモニターがあげられる。消化管の造影検査では、被検者に適切な体位変換をさせながらバリウムと空気により目的部位の粘膜の性状が細かく描出されていることを透視下に確認しながらX線像を撮像していく。血管造影ではガイドワイヤーとカテーテルの選択的挿入や各種塞栓(そくせん)物質の注入をモニターし、脊髄(せきずい)造影では造影剤のクモ膜下腔(こう)への注入と検査部位への移動をモニターする。各種穿刺術では、穿刺針が目的部位に正しく進んでいることを透視下に確認しながら検査を進める必要がある。なおX線透視を用いる前記の検査に伴うX線被曝は、同じ部位の1枚のX線像を得る場合の10~20倍に達する。長時間の透視はときに皮膚障害の原因ともなりうる。したがって検者と被検者双方の被曝を軽減するためには必要な遮蔽(しゃへい)を行うとともに透視時間を最小限に抑えるよう努力しなければならない。

大友 邦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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