H2ブロッカー(読み)エッチツーブロッカー

百科事典マイペディア 「H2ブロッカー」の意味・わかりやすい解説

H2ブロッカー【エッチツーブロッカー】

もともとは医療機関が専門に使用してきた胃潰瘍(かいよう)・胃炎用薬。胸焼け胃痛,もたれ,むかつきの抑えに高い効果をもつとの定評がある。1997年9月から大衆薬(OTC薬)に転用され(スイッチOTC),薬剤師のいる薬局・薬店で販売されるようになった(大衆薬転用を厚生省が認可したのは1997年7月)。英国では1994年から,米国では1995年から大衆薬となっている。 H2ブロッカーの〈H〉はヒスタミンの略。胃液分泌を促すヒスタミンの作用を抑えることから,この名がついた。胃・十二指腸潰瘍の約8割が1ヵ月以内に治るといわれるほどの効き目があり,潰瘍の手術数を激減させた。医療機関での販売額は年間約1950億円(薬価ベース),医療用の消化性潰瘍剤のトップを占める。 高い効果が期待できる反面,副作用として,まれに白血球血小板の減少,むくみや蕁麻疹(じんましん)などが起きることがある。また,症状がよくならないまま長期的に服用することで,胃癌(がん)の症状に気づかず,発見が遅れる可能性があるなどの指摘もある。このため,大衆薬に転用するにあたっては,慎重論も高かった。こうしたことを考慮して,厚生省では,飲みあわせの禁忌や,3日間服用しても症状が改善されない場合には服用をやめるなどの〈使用上の注意〉を明記するほか,薬剤師が店頭で十分な説明を行うこと,製薬会社が薬のパッケージとは別に,注意事項などがわかる小冊子を消費者に配布すること,大衆薬転用後3年間は,できるだけ多くの使用後アンケートを消費者から集めることなどを転用の条件とした。また,広告についても,〈不必要な使用をあおるようなものは避けること〉との注文を付けた。1997年4月に施行された改正薬事法では薬剤師に消費者への〈情報提供の努力規定〉が盛り込まれたが,H2ブロッカーはこのテストケースともいえる。
→関連項目逆流性食道炎

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