鹿子餅(読み)かのこもち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鹿子餅」の意味・わかりやすい解説

鹿子餅
かのこもち

江戸中期の噺本(はなしぼん)。1冊。木室卯雲(きむろぼううん)作、勝川春章(かつかわしゅんしょう)画。1772年(明和9)刊。63話の小咄(こばなし)を収める。従来の上方(かみがた)中心に行われていた軽口(かるくち)本が半紙本で、「……と云(い)うた」形式で登場人物の愚行を笑うのんびりした話であったのに対し、書形も小本(こほん)で、話末も会話体で言い切りの形をとり、内容も作者の鋭い、うがちの利いた軽妙洒脱(しゃだつ)なものであったため好評を博し、『聞上手(ききじょうず)』以下の江戸小咄本の爆発的流行を招来せしめた。噺本の歴史上一世を画する作品で、江戸小咄本の始祖的地位を認められている。本書成立の素地として上方での漢文笑話の流行があげられる。

[岡 雅彦]

『興津要編『江戸小咄』(講談社文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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