鳳至郡(読み)ふげしぐん

日本歴史地名大系 「鳳至郡」の解説

鳳至郡
ふげしぐん

面積:五六〇・三一平方キロ
穴水あなみず町・門前もんぜん町・柳田やなぎだ村・能都のと

能登の中央部から西部一帯を占め、東西に長く延びる。西は門前町で外浦に面する。南の大部分は内浦に面し、小湾が多い。北は輪島市、東は珠洲すず市・内浦町に接する。南西部の内浦側は中島なかじま町、外浦側は富来とぎ町に接する。郡域の大部分は標高二〇〇―三〇〇メートルの低丘陵と、その間を樹枝状に流れる小河谷に占められ、面積の八〇パーセントが山林である。南西部の桑塚くわづか(四〇八メートル)、中央北部の鉢伏はちぶせ(五四三・六メートル)などが比較的高い山で、奥能登丘陵が東西に走って分水嶺をなす。東部を北流する町野まちの川、西部を西流するはつヶ川、中央部を南流する山田やまだ川・小又おまた川などがある。郡中央部をJR七尾線が南北に通り、穴水駅から第三セクターのと鉄道が分岐し、内浦沿いを東へ通じる。国道二四九号が能登半島を一周し、能登有料道路が縦断している。

〔原始〕

外浦と内浦の沿岸部を擁するため、縄文時代以来の数多い遺跡が残る。とくに内浦や七尾北湾の沿岸には長期にわたって営まれた大遺跡が多く、イルカ漁で著名な能都町真脇まわき遺跡(国指定史跡)穴水町甲小寺かぶとこでら遺跡(前期初頭)新崎にんざき遺跡(中期前葉)があり、御物石器の命名の由来ともなった穴水町比良びら遺跡は学史的にも重要である。外浦では門前町道下元町とうげもとまち遺跡などに中期を主体とする集落跡がみられる。中・後期の弥生土器が真脇遺跡や門前町深田ふかだ遺跡で出土している。古墳時代に入ると後期に能都町七見しちみいずがま古墳・穴水町前波まえなみ古墳群など特殊な横穴式石室を備えるものが出現する。とくに穴水町内浦のそでばたけ古墳からは、安政二年(一八五五)に優美な金銅装双竜式環頭大刀が発掘され著名である。外浦では門前町高根尾たかねお・深田・和田わだ本市もといちなど八ヶ川流域に臨む丘陵地で小古墳群が発見され、前方後方墳を含む可能性も高い。

〔古代〕

「続日本紀」養老二年(七一八)九月二日条によれば、越前国に属した当郡および羽咋はくい・能登・珠洲の四郡が割かれ、能登国が立国された。これ以前の評制施行期の鳳至評、または大宝令の国郡制施行による立郡については不明。天平一三年(七四一)一一月一〇日能登国は越中国に併合された(続日本紀)。同二〇年春越中守大伴家持が出挙督励のため、旧能登国の四郡を巡行し、当郡の饒石にぎし(現門前町の仁岸川)を渡り「妹に逢はず久しくなりぬ饒石川清き瀬ごとに水占はへてな」と詠んだ(「万葉集」巻一七)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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