鯱張(読み)しゃちこばる

精選版 日本国語大辞典 「鯱張」の意味・読み・例文・類語

しゃちこ‐ば・る【鯱張】

〘自ラ五(四)〙 (「さしこわる(差強)」の変化した語か)
① いかめしく構える。威厳をつくる。いばって見せる。しゃちほこばる。しゃちばる。
※京大二十冊本毛詩抄(1535頃)二「小人にしたがうて居よかしと思へども、しゃちこはっていやぢゃと思ふ心があるぞ」
※夢見草(1970)〈加賀乙彦〉「厳しいお巡りさんがしゃちこばって護衛する」
② 緊張してかたくなる。からだをこわばらせる。
咄本・軽口出宝台(1719)一「はらにてのりたちがしたやら、しゃちこばり、目を見つめ、すでにあやうき所なり」
③ 物がかたくなる。こわばる。
浄瑠璃・菅原伝授手習鑑(1746)二「其木像見せさっしゃれ。ヲヲしゃちこばった荒木作り」
[語誌](1)シャチホコ‐バル(鯱張)の転とする説があるが、用例の年代や各地の方言形などから、シャチホコバルはシャチコバルよりも新しい語形であり、考えにくい。中世の口語資料に見えるサシ‐コハル(差強)がもとの形であると考えられる。
(2)一方、シャチは硬直する意の動詞「しゃつ」の連用形とする見方もある。
(3)シャチ‐コハルのコハル(強)がコバルに変化すると、シャチ‐バルなどへの類推からバル(張)が意識されシャチコ‐バルと異分析を生じ、さらにシャチを鯱とする語源解釈からシャチホコ‐バル、シャッチョコ‐バル等が生まれたと思われる。

しゃち‐ば・る【鯱張】

〘自ラ四〙
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)三「相如も犢鼻をといて、高蓋駟馬で蜀へかへるぞ。是も皆銭のする処ぞ。しゃちはった事をかいたぞ」
※俳諧・天満千句(1676)八「糊つくる苔の衣もいかなれや〈西花〉 坐禅とこにしゃちはってゐる〈直成〉」
③ でしゃばる。さし出る。〔志不可起(1727)〕

しゃちほこ‐ば・る【鯱張】

落語・お祭佐七(1890)〈禽語楼小さん〉「『賢臣二君に事(つか)へず』抔と云って鯱鉾張(シャチホコバッ)てて」

しゃっちょこ‐ば・る【鯱張】

〘自ラ五(四)〙 「しゃちほこばる(鯱張)」の変化した語。〔東京語辞典(1917)〕
※彼と彼の内臓(1927)〈江口渙〉「両手テーブルの角へ突いて、変に鯱鉾張(シャッチョコバ)った様子をしながら」

しゃっちこ‐ば・る【鯱張】

〘自ラ五(四)〙 「しゃちこばる(鯱張)」の変化した語。
※滑稽本・七偏人(1857‐63)初「何か体をぎくしゃくとしゃっちこ張(バラ)せて入来る様子」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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