鮑・鰒・石決明(読み)あわび

精選版 日本国語大辞典 「鮑・鰒・石決明」の意味・読み・例文・類語

あわび あはび【鮑・鰒・石決明】

〘名〙
① ミミガイ科に属するクロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビなどアワビ類の総称。北海道、本州、四国、九州の沿岸に分布。巻貝だが、巻いた部分は小さく、殻は楕円形で殻口は著しく大きく、広い足で岩礁に付着する。殻が二枚貝の片側だけのように見えるので「片思い」のたとえにいう。長さ一〇~二〇センチメートル。表面は主に褐色で、孔が一列に並ぶが、後半の三~四個以外は孔がふさがっている。開いている孔は出水孔で、糞もここから出る。雌雄異体。内面には強い真珠光沢がある。肉は食用、殻は螺鈿(らでん)、貝細工、貝ボタンの材料になる。《季・夏》
※催馬楽(7C後‐8C)我家「御肴に何よけむ安波比(アワヒ)栄螺(さだを)か石陰子(かせ)よけむ」
※平城宮址出土木簡(747頃)「長鮑(あはび)御取鮑(あはび)
※俳諧・春鴻句集(1803頃)冬「藻かづきの石決明涼しき獲哉」
② 「あわび(鮑)の片思い」の略。また、片恋をする人。
※雑俳・柳多留‐一六二(1838‐40)「蛤を蚫がねらひ九十九夜」
③ 女陰。
※浄瑠璃・奥州安達原(1762)二「ドレいんで取溜の鮑、内でむいたりむかしたり」
[語誌]伊勢神宮で古くから神饌として供されたほか武士出陣帰陣吉例として出されたり、また正式な贈り物には熨斗に鮑の一片が添えられたりするなど、様々な意味が付与され使用されてきた。

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