飢餓死(読み)きがし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「飢餓死」の意味・わかりやすい解説

飢餓死
きがし

食物や栄養の補給が長期間とだえたり、不足した状態を飢餓といい、その状態が長引くと体内の栄養素を消費し続け、ついには死に至ることを飢餓死(餓死)という。飢餓は大まかに完全飢餓と不完全飢餓に分けられる。いずれの場合でも、るいそう(衰えやせること)をきたすが、前者は食物や栄養だけでなく水も完全に断たれた場合で、絶対飢餓ともいわれ、身体に浮腫(ふしゅ)(むくみ)がみられないことから乾性飢餓ともいわれる。なお飢餓の分類はかならずしも統一的ではなく、水分以外の摂取がまったくないものを完全飢餓ということもある。この場合、水をまったくとらなければ1週間くらいで死亡するが、水を摂取すると20~40日間は生存可能といわれている。後者は食物や栄養全体が量的に不足した場合や、ある種の栄養素のみがとだえた場合などで、身体に浮腫がみられることから湿性飢餓ともいわれる。わが国のような食糧事情のよい社会でも、幼・小児や知的障害者などの虐待とか監禁の結果、飢餓死に至る事例のほか、種々の肉体的・精神的疾患が原因で、飢餓状態に陥り死亡する場合がある。

[古川理孝]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の飢餓死の言及

【餓死】より

…生体は,生命維持に必要なエネルギーを食物の摂取によって得ているが,なんらかの理由で持続的に摂取エネルギーが不足すると,自身の組織構成成分が漸次分解され,体重が減少する。このような状態を飢餓hunger(starvation)といい,それによる死を飢餓死または餓死という。飢餓には食物をまったく摂取しない完全飢餓(水だけ摂取する場合を含む)と栄養の不足または失調による不完全飢餓があり,完全飢餓では,初期のエネルギー補給は筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンで行われるが,グリコーゲン消費後も脂肪によって持続的なエネルギーの補給が行われ,ついにはタンパク質も分解される。…

※「飢餓死」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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