革羽織(読み)カワバオリ

デジタル大辞泉 「革羽織」の意味・読み・例文・類語

かわ‐ばおり〔かは‐〕【革羽織】

鹿のみ革で作った羽織近世は、多くふすべ革で仕立てて防火用とし、鳶頭とびがしら職人棟梁とうりょうなどが着用した。 冬》老骨をばさと包むや―/竜之介
すれっからしの女。莫連ばくれん者。あばずれ者。
「てめえのやうな―が、大磯にたくさんあるものか」〈洒・曽我糠袋〉

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精選版 日本国語大辞典 「革羽織」の意味・読み・例文・類語

かわ‐ばおり かは‥【革羽織】

〘名〙
燻革(ふすべがわ)で作った羽織。多く防火用、防寒用。江戸時代から明治時代にかけては、特に鳶頭(とびがしら)や職人の棟梁(とうりょう)などが着用した。《季・冬》
※一柳家記(1641)「羊之革羽織、為褒美四郎右衛門に給之」
※俳諧・虎渓の橋(1678か)「むねにたく火は消えすみになる〈西鶴〉 かたみこそ今はあだなれ革羽織〈松意〉」
② すれっからしの女。あばずれ者。かわ
※洒落本・寸南破良意(1775)髪結「いまゑましい革羽織(カハハヲリ)だ」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「革羽織」の意味・わかりやすい解説

革羽織
かわばおり

革でつくった羽織。獣毛のついたものと、なめした革を使ってつくったものとがある。前者は、陣羽織に用いた場合が多い。埼玉県川越(かわごえ)市の喜多院(きたいん)にある『職人尽絵屏風(しょくにんづくしえびょうぶ)』のなかに革師が描かれ、革羽織、革足袋(たび)などがみられる。これは室町時代末期から革羽織が着用されていた好例である。また、石川県輪島(わじま)市門前町(もんぜんまち)地区の廻船(かいせん)問屋にも、桃山時代の、ウサギが跳んでいる模様の革羽織が収蔵されている。民間で着用されるようになったのは、江戸時代中期以降で、ことに厳寒のおりに、人足出入りの多い鳶(とび)の頭(かしら)の間で用いられた。そればかりでなく、江戸では初冬から春にかけて火事が多かったので、鳶の頭たちは組の印を入れた革羽織を半纏(はんてん)がわりに着用した。また紋日などの外出の際には、表を熏韋(ふすべがわ)とし、裏は色と模様を変えたものを用いることもあった。

[遠藤 武]

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