電気盆(読み)デンキボン

デジタル大辞泉 「電気盆」の意味・読み・例文・類語

でんき‐ぼん【電気盆】

静電誘導によって物体に帯電させる実験器具。絶縁体の柄をもつ金属板をエボナイトの盆に載せたもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「電気盆」の意味・読み・例文・類語

でんき‐ぼん【電気盆】

〘名〙 電気的絶縁体でつくった平らな円盤の上に絶縁棒をつけた平らな金属円板を重ねたもの。下の板を毛皮などで摩擦し、上の板を重ね合わせ、上面を指でふれて上面にたまった電荷を逃し、絶縁棒で金属板をひき上げると、金属板とともに絶縁板の電荷と反対符号の電荷を取り出すことができる。講義実験用。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電気盆」の意味・わかりやすい解説

電気盆
でんきぼん

一つの電荷を元にしていくつもの電荷をつくりだす静電気の実験器具の一つ。1775年ボルタ発明による。電気盆は図Aに示すように、絶縁体の柄(え)のついた金属円板Aと絶縁体(普通はエボナイト)でつくった円板Bとからなる。円板Bの直径は円板Aの直径よりも大きい。図Bは電気盆の操作を示す。円板Bをフランネルあるいは柔らかい毛でこすって(負に)帯電させる(a)。円板Aを円板Bに近づける。このとき、金属板AのB側には正の電荷が、反対側には負の電荷が現れる(b)。円板Aの上側を指で触れ、負電荷大地に逃がす(c)。指を離してから円板AをBから遠ざける。このとき、円板Aは正に帯電している(d)。以上の操作を繰り返すことによって、何回でも金属板に同程度に帯電させることができる。物体が帯電した状態では静電エネルギーを蓄えているが、このエネルギーは、円板Aを円板Bから遠ざけるとき、手が円板に行う仕事から供給される。

[山口重雄]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「電気盆」の意味・わかりやすい解説

電気盆【でんきぼん】

静電誘導によって静電気を手軽に得る装置の一つ。台にのせたエボナイト円板と,絶縁体の柄のついた金属円板からなる。エボナイト板を毛皮でこすって負に帯電させたのち,金属板をのせると静電誘導により正と負の電気を生じるが,金属板に指を触れて負の電気を逃がしてから持ち上げると,金属板に正電気が得られる。エボナイト板と金属板の接触が小さいため,前者負電気はなかなか減少せず,いったん帯電させれば上の操作を繰り返して何度でも正電気が得られる。
→関連項目起電機ボルタ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電気盆」の意味・わかりやすい解説

電気盆
でんきぼん
electrophorus

最も簡単で,古くからある静電誘導による蓄電器具。 1775年に A.ボルタが発明した。よく乾いた毛皮でエボナイト板を十分に摩擦すると,エボナイト板は負に帯電する。この上に絶縁した柄のついた金属円板を載せ,指を金属円板にちょっと触れてから金属円板をエボナイト板から離すと,金属円板は正に帯電している。エボナイト板の表面は一見なめらかにみえるが,実際は金属円板との間にすきまがあり,静電誘導により金属円板中で正電荷はエボナイト板に引寄せられ,負電荷は指を通じて人体にとられる。このような操作を繰返すことで電荷を保持することができる。またエボナイト板の代りに帯電した塩化ビニル板を用いてもよい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の電気盆の言及

【起電機】より

…これは摩擦電気を利用した起電機で,その後改良され,初期の電気研究に用いられたが,18世紀後半になると静電誘導の現象を利用した起電機が主流となった。(1)電気盆 1775年にA.ボルタが発明したもので,図1のように絶縁体の柄をつけた金属板とエボナイト板からなる。あらかじめ摩擦により負の電荷を帯電させたエボナイト板に金属板を近づけ,同時に金属板を接地すると,金属板は静電誘導により正に帯電する。…

※「電気盆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」