隠退蔵物資摘発(読み)いんたいぞうぶっしてきはつ

改訂新版 世界大百科事典 「隠退蔵物資摘発」の意味・わかりやすい解説

隠退蔵物資摘発 (いんたいぞうぶっしてきはつ)

第2次大戦の敗戦時隠匿された旧軍関係物資の調査,摘発をいう。敗戦直前の1945年8月14日の閣議は軍保有物資の緊急処分を決定,実施し,自動車ガソリン,銅から食糧にいたるまで放出,一部の者が隠匿した。その額は約2400億円にのぼるといわれた(ちなみに1946年度国家予算は約560億円)。そこで摘発が行われ,46年1月22日には,東京の板橋,滝野川両区民が陸軍造兵厰滝野川倉庫の大豆木炭などを摘発,〈人民配給〉を行った。政府は2月17日,隠退蔵物資等緊急措置令を発して摘発に着手し,6月13日,社会秩序保持声明で,民間の摘発を違法と断定した。47年2月14日,経済安定本部に隠退蔵物資等処理委員会(委員長石橋湛山)を設けて摘発を行ったが,世耕弘一副委員長にかかわる汚職事件のため,8月に委員会は廃止された。この間調査件数167件に及んだ。7月25日衆議院に隠退蔵物資等に関する特別委員会(委員長加藤勘十)を設け,横須賀・呉海軍工厰などを摘発した。その額は48年3月までに粗鋼,非鉄金属,機械,ゴム,繊維など2億2800万円に上り,産業復興公団に引き渡され,5月から一般に配給,売却された。47年12月11日,衆議院の不当財産取引調査特別委員会(委員長加藤勘十,ついで武藤運十郎)に引きつがれ,辻嘉六の献金問題,昭電事件などが取り上げられ,政界が揺れた。しかし,48年12月の国会解散で同委員会は消滅,49年3月29日,反税闘争や労働争議の不法誘発などをも取締りの対象とする考査特別委員会が設置された。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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