陸・碌(読み)ろく

精選版 日本国語大辞典 「陸・碌」の意味・読み・例文・類語

ろく【陸・碌】

〘名〙 (形動) (「直」「完」とも書く。「碌」と書くのは当て字)
① 土地の平らなこと。また、物の面が水平であること。平坦なこと。また、そのさま。
※羅葡日辞書(1595)「Inexplanatus〈略〉タイラカニ、rocuni(ロクニ) ナキモノ、ヤワラゲザル コト」
日葡辞書(1603‐04)「Rocuna(ロクナ) ミチ」
② 物がゆがまないで、まっすぐなこと。姿、形が正しいこと。また、そのさま。
※虎明本狂言・乳切木(室町末‐近世初)「此かけ物もろくにかけてもらひたい」
気持が平らかであること。気分が安らかであること。心身をゆったりさせること。くつろぐこと。また、そのさま。→陸(ろく)に居る
※雑俳・住吉御田植(1700)「ろくに成るお祖母の心念仏から」
※浮世草子・御前義経記(1700)二「ろくにやすませ給へ」
④ 世の中が泰平であること。平穏であること。また、そのさま。
※俳諧・西鶴大句数(1677)三「勝軍礒うつ波のまくり切 今嶋はらはろくに治る」
⑤ (ふつう後に打消の語を伴う) 物事の様子、性質などが正しいこと。まともであること。完全であること。十分であること。また、そのさま。
※天理本狂言・茸(室町末‐近世初)「今まで此やうな事は、見た事もきいた事もない、ろくな事ではあるまひと存て気遣仕る」
※俳諧・大坂独吟集(1675)上「博奕打子は三界のくびかせよ こころはやみに夜もろくにねず〈素玄〉」
[補注]「陸」の呉音による語で、陸地のように平らであるというのが原義。今日でも大工用語で「陸屋根」「陸墨」などと、平らの意に「陸(ろく)」を用いている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報