日本大百科全書(ニッポニカ) 「附子(狂言)」の意味・わかりやすい解説
附子(狂言)
ぶす
狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。主人は太郎冠者(シテ)と次郎冠者に留守居を命じ、附子(「ぶし」ともいい、トリカブトの根を乾燥させた毒薬)という猛毒が置いてあるから気をつけるよう注意して出かけていく。冠者たちは附子が気になってしかたがない。こわごわ桶(おけ)をのぞき、なめてみると、砂糖である。2人は桶を奪い合って全部食べてしまい、さて言い訳にと、主人秘蔵の掛軸や茶碗(ちゃわん)を破損する。そして帰宅した主人に、留守中相撲(すもう)をとってだいじな品々を壊したので、死んでおわびしようと附子を食べたがまだ死ねないと報告する。主人は腹をたて、2人を追い込む。『沙石集(しゃせきしゅう)』巻8―11「児ノ飴(アメ)クヒタル事」は同趣向の説話であるが、直接の典拠かどうか未詳。
[林 和利]