門ノ沢動物群(読み)かどのさわどうぶつぐん(英語表記)Kadonosawa fauna

日本大百科全書(ニッポニカ) 「門ノ沢動物群」の意味・わかりやすい解説

門ノ沢動物群
かどのさわどうぶつぐん
Kadonosawa fauna

岩手県二戸(にのへ)市福岡町門ノ沢地域より産出する動物化石群。この地域に発達する、いまから約1500万年前の中新世中期海成層を研究した地質学者・古生物学者の大塚弥之助(やのすけ)により、1938年(昭和13)に命名された。この動物群に類似のものが、北海道をはじめ本州から九州にかけての多くの地域から発見されていて、いずれも温暖な海域に生息したビカリアVicaryaなどの軟体動物や、サンゴ類、海綿類、腕足類の化石種を含んでいる。とくに秋田県男鹿(おが)市台島(だいじま)付近の西黒沢から産出する類似の動物群は台島動物群とよばれ、温暖海域に生息した大形有孔虫(高等有孔虫)に属するミオジプシナMiogypsinaやオパキュリナOperculinaの化石を伴っている。門ノ沢動物群とともにこれらの大形有孔虫化石を産出する地域が多いため、大形有孔虫を伴う動物群を台島動物群、西黒沢動物群とよんで区別することがある。一部の地域では別種の大形有孔虫レピドシクリナLepidocyclinaを伴っている。

 これらの動物群を産出する海成層と対比される汽水‐淡水成層からは台島植物群が、またこれらの海成層の下位にある汽水‐淡水成層からは、いまから2000万年前ごろの中新世前期と考えられる阿仁合植物群(あにあいしょくぶつぐん)を産出している地域が多い。そのため、中新世の前期から中期にかけて日本列島は沈降を続け、温暖な海域が広がったことが考えられる。門ノ沢動物群や台島動物群の化石の細かい産出順序を調べると、下位から上位にかけて、汽水もしくは内湾に生息した種を産出する地層から、外洋に生息した種を多く産出する地層へと移行していった変化が認められる。とくに門ノ沢動物群と同じ時期に、マングローブの自生する温暖な海の内湾にすむ巻き貝を含む動物群が、本州中部以南の各地から発見され、黒瀬谷動物群(くろせだにどうぶつぐん)とよばれ、この時期の日本列島の海況復原に興味ある資料となっている。北海道の築別(ちくべつ)動物群や、滝ノ上(たきのうえ)動物群とよばれているものもほぼ同時代のものである。

[大森昌衛]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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