金融デリバティブ(読み)きんゆうでりばてぃぶ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金融デリバティブ」の意味・わかりやすい解説

金融デリバティブ
きんゆうでりばてぃぶ

通常の金融取引は原証券primary securitiesの売買に関するものであるが、金融デリバティブとは原証券の売買契約や売買の権利・義務を商品化したものに関する取引のことである。デリバティブderivativesは原証券から派生した証券(商品)という意味で、金融派生商品ともいう。これには金融先物future、オプションoption、スワップswapがあり、さらにこれらを組み合わせた複雑な派生商品が取引されている。金融派生商品の取引は資産・負債として貸借対照表に記録されないことから、「オフ・バランス取引」とよばれている。

 債券先物取引の例として次のようなものがある。国債の保有者が将来の値下りによる不測損失を避けるために、先物市場で国債の売り契約を結ぶ。将来予想どおり国債が値下りすれば、評価損を被るが、あらかじめ先物で売り契約をしておけば、値下り前の有利な契約価格で国債を手放すから、評価損を受けずにすむことができる。これはヘッジhedgeといわれ、価格変動リスク回避するために行われる。金融先物取引はヘッジを目的とするほかに投機裁定にも用いられる。

 オプション取引とは、金融商品についてあらかじめ決めた価格(行使価格)で将来の一定期限までに買う権利(コール・オプション)あるいは売る権利(プット・オプション)を、オプション手数料を対価に売買するものである。またスワップ取引は、異なる通貨建ての債権債務あるいは異なる金利の受払を、あらかじめ定めた方法で相互に交換する取引をいう。これら通貨スワップや金利スワップによって為替(かわせ)リスク・金利リスクの回避が可能となる。

[石田定夫]

『小田信之著『ファイナンス・ライブラリー1 金融デリバティブズ』(2001・朝倉書店)』『三宅輝幸著『デリバティブ取引の基礎――利用法からリスク管理まで』5訂版(2008・経済法令研究会)』

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