日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
迷路(通り抜けにくくつくられた道)
めいろ
なかなか通り抜けられないようにつくられた道のこと。古代バビロニアの粘土板やギリシア神話などにみられるように、人類とは古いつながりがある。歴史的にみれば迷路にはいろいろな目的があった。いちばん多いのが、宗教とのかかわりである。それは魔除(まよ)けであり、死であり、天国との間の障害でもあった。日本だけでなく、城下町の道路が複雑に入り組んでいるのには、敵がすんなりとは攻め入れないようにという軍事的なねらいがあった。やがて16~17世紀になると、楽しむことを目的とした、いわゆる庭園迷路が、とくにイギリスを中心に発達する。現在でも数十の生け垣迷路が残っている。
日本で1980年代後半に起こった迷路ブームは、スチュアート・ランズボローStuart Landsboroughが、ニュージーランドのワナカという小さな村で始めた商業迷路がきっかけである。彼はいろいろな試行錯誤を重ね、迷路の立体化、チェック・ポイントの設定、仕切り壁の自由変更などで、人間の動きのコントロールのノウハウを得て、1985年(昭和60)に日本に乗り込んだ。日本では、87年には、ランズボロー・メイズという名のもとで20か所、そのほかを含めると百数十か所の迷路施設が商業化されていた。大きいものは、縦・横各90メートルもあり、平均所要時間は1時間前後である。迷路は単なる知的遊技にとどまらず、一種の軽い屋外スポーツとしての意義から、広く支持を受けたが、ブームが去るとこれらの施設は相次いで閉鎖された。
[芦ヶ原伸之]