迷チョウ(読み)めいちょう(英語表記)stray butterfly

日本大百科全書(ニッポニカ) 「迷チョウ」の意味・わかりやすい解説

迷チョウ
めいちょう
stray butterfly

その地域にすみついていない昆虫チョウが、ほかの地域からやってくる場合に、これを迷チョウ(または偶産チョウ、偶産種)という。日本の迷チョウのなかには、ほとんど毎年、南方から日本本土にやってきて、初夏から秋にかけて幼虫が発生して繁殖をするものもあるが、冬の寒さに耐えることができず死滅して、年を越すことはない。その代表的なものはメスアカムラサキリュウキュウムラサキアオタテハモドキウスイロコノマチョウなどで、これらを候チョウとよぶこともある。

 毎年ということではないが、ときに南方より北上して高温期に一時的に発生するウラナミシロチョウのようなものもあるし、きわめてまれにしか日本にやってこない種(日本での発見例が1、2例しかないもの)までさまざまの段階がある。近年では、その地域にすみついていないチョウを含め、すべて迷チョウとよぶのが普通である。

 日本に飛来する迷チョウは熱帯ないし亜熱帯性のものが多く、寒地性のものはきわめて少ない。これは春から夏にかけて南方からの季節風が日本に吹き付けると(台風もある)、日本の気温も上昇して迷チョウを受け入れられる気候的条件になっているためである。日本で発見される迷チョウは約50種、その発見例は琉球(りゅうきゅう)諸島にもっとも多い

白水 隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の迷チョウの言及

【チョウ(蝶)】より


[日本のチョウ相]
 現在日本にはおよそ230種のチョウが分布している。しかしこれは領土内で明らかに生活が確認されている土着種の数で,これ以外に約40種の迷チョウが知られている。迷チョウとは外国から台風や前線に伴う風で運ばれて記録されたもの,もしくは一時的に国内で世代をくりかえしたが姿を消したもの,あるいは人為的に(無意識のうちに)もち込まれたものを指し,偶産チョウともいわれる。…

※「迷チョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」