日本大百科全書(ニッポニカ) 「越前(町)」の意味・わかりやすい解説
越前(町)
えちぜん
福井県中西部、丹生郡(にゅうぐん)にある町。西は日本海に面し、越前岬の南と東に位置する。1955年(昭和30)四ヶ浦(しがうら)町と城崎(しろさき)村が合併して越前町と改称。町名は、美味をもって全国的に知られるエチゼンガニおよびエチゼンウニの産地として、また越前岬の所在地であるところから名づけられた。2005年(平成17)朝日町(あさひちょう)、織田町(おたちょう)、宮崎村(みやざきむら)と合併し、新町域は内陸の武生(たけふ)盆地までを占めるようになった。海岸部を国道305号が走るほか国道365号、417号が通じる。越前海岸にはみごとな海岸段丘が並び、また切り立った断崖(だんがい)をもつ男性的な海岸美は、越前加賀海岸国定公園中の代表的風景の一つである。海岸線は単調で天然の良港は少ないが、本県の海岸中もっとも漁場に近く、数多くの漁村を有し、夏の海水浴・ウニ漁、冬のカニ漁に多数の訪客を集めている。なお初冬、段丘面に咲き乱れるスイセンは県花に指定されている。玉川温泉(越前温泉)もある。劒(つるぎ)神社の梵鐘(ぼんしょう)は国宝に指定される。面積153.15平方キロメートル、人口2万0118(2020)。
[印牧邦雄]
『『越前町史』全3巻(1977~1993・越前町)』