貸釜(読み)かしがま

改訂新版 世界大百科事典 「貸釜」の意味・わかりやすい解説

貸釜 (かしがま)

塩煮用の釜や炊飯用の釜を貸借する制度や慣行および貸借される釜をいう。前者は近世加賀藩において塩の専売制一環としてとられたもので,能登塩の製造にあたり藩費をもって中居(現,石川県穴水町)の鋳物師塩釜を鋳造させ,これを塩士に貸与する制度であった。この塩釜は御仕入釜と呼ばれ,藩が最初の6ヵ年,その後鋳物師が7ヵ年釜を所有して塩士に貸し付け,13年満期で塩士に払い下げられるものであった。この原則は藩政末まで行われたが,このほか鋳物師が自らの費用で塩釜を鋳造し,破損の場合の修繕を前提に塩士に直接貸し付ける方法もあり,明治時代まで続いた。後者は富山県下に見られる慣行で,高岡産の鍋釜をナベヤと呼ばれる者が仕入れ,農繁期の前後に農家や町家を巡回し,貸し付け修繕して歩くものである。貸料は容量によって異なり,一般に米で支払われた。一村のうち7~8割が借りており,貧富による差はなかった。第2次大戦前まで富山市や砺波地方で見られた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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