財政再建派(読み)ざいせいさいけんは

知恵蔵 「財政再建派」の解説

財政再建派

経済と財政の関係において、財政(国家)の収支バランスを取ることが、経済(市場)の安定成長の基礎だと考え、歳出を可能な限り削減し、それでも不足する歳入赤字は、国債(借金)に頼るのではなく、増税でまかなうべきだとする立場。反対派からは「財政タカ派」とも呼ばれる。戦前、軍事国債が赤字国債として発行されインフレショーンを引き起こした反省から、戦後、財政法で建設公債以外の国債発行を禁じたが、73年のオイルショック以降の不況期に特別立法で赤字国債を発行することが常態化して以降、日本は「借金大国」となっている。2008年度(平成20年度)一般会計予算の歳出・歳入は約83兆円で、このうち、税収でまかなわれているのは6割強の約54兆円にすぎず、約3割の25兆円は国債に依存している。累積している国債の債務残高は約553兆円で、一般会計予算税収の約10年分に相当する。地方債も合わせた公債の債務残高は約778兆円となり、GDP(国内総生産)の148%に達し、主要先進国の中でも突出して悪い水準である。この財政を再建するために、06年の小泉内閣の「骨太の方針06」で、11年度にはプライマリーバランスを黒字化することが閣議決定された。プライマリーバランスとは、国債費の元利払いを除いた一般歳出と国債金収入を除いた歳入(税収)の基礎的財政収支均衡のことで、プライマリーバランスを黒字化するには、歳出をカットするか、歳入を増やすしかない。財政再建派は、歳入増加を、経済成長による税収増に頼るだけではなく、消費税率を上げることで達成しようとする。08年9月の自民党総裁選では、経済政策をめぐって、「財政再建派(増税派)」「上げ潮派(構造改革派)」「積極財政派(バラマキ派)」の三つに分かれた。財政再建派(増税派)の立場に立ったのは、与謝野馨だった。他の二派からは、経済を萎縮させ、結局税収も増えない、と批判されたが、与謝野は短期的には財政出動にも理解を示した。

(高橋誠 ライター / 2008年)

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