譬・喩(読み)たとえる

精選版 日本国語大辞典 「譬・喩」の意味・読み・例文・類語

たと・える たとへる【譬・喩】

〘他ア下一(ハ下一)〙 たと・ふ 〘他ハ下二〙 ある事柄・物を説明するのに、その内容性質などの似かよった他の事柄・物を引き合いに出していう。他に擬す。なぞらえる。たとう。
万葉(8C後)三・三五一「世間を何に譬(たとへ)む朝びらき漕ぎ去にし船の跡なきごとし」
※大日経義釈延久承保点(1074)「以て如来の智に喩(タトフ)べし」
[補注]室町時代頃からヤ行にも活用した。→たとゆ(譬)

たとえ たとへ【譬・喩】

〘名〙 (動詞「たとえる(譬)」の連用形名詞化) 異質の物事類似点をとらえ、連想させること。また、わかりやすく引きあいに出した語句引用の例。たとしえ。
※万葉(8C後)七・一一三七「宇治人の譬(たとへ)の網代吾ならば今は寄らまし木屑(こつみ)来ずとも」
源氏(1001‐14頃)若菜上「古への世のたとへにも、さこそはうはべにははぐくみげなれと、らうらうじきたどりあらむも賢きやうなれど」

たと・う たとふ【譬・喩】

[1] 〘他ハ四〙 =たとえる(譬)
※類従本賀茂女集(10C後)「つれづれと雨のふるをながめいたるをなむ、まなこをばなかるる水にたとへり」
[2] 〘他ハ下二〙 ⇒たとえる(譬)

たと・ゆ【譬・喩】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段動詞の「たとふ」から転じて、室町時代頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「たとゆる」の形をとる) =たとえる(譬)
※土井本周易抄(1477)一「陽を竜に譬ゆる程に陰を馬にたとゆるぞ」

たとい たとひ【譬・喩】

〘名〙 (動詞「たとう(譬)」の連用形の名詞化) =たとえ(譬)
※宇津保(970‐999頃)吹上上「見苦しき事多く、累代のたといにもやならん」

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