許褚(読み)きょちょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「許褚」の意味・わかりやすい解説

許褚
きょちょ

生没年不詳。中国、三国魏(ぎ)の武将。沛(はい)国譙(しょう)県(安徽(あんき)省亳州(はくしゅう)市)の人。腰回りが十囲(い)(約115センチメートル)もあり、容貌(ようぼう)は雄々しく、武勇は人並み外れていた。一族郎党を率いて塢(う)(砦(とりで))を築き、賊の侵入を防いでいた。曹操(そうそう)に帰順すると、「わたしの樊噲(はんかい)である」と、劉邦(りゅうほう)の猛将樊噲に準(なぞら)えられた。典韋(てんい)の死後、曹操の身辺警護を行った。官渡(かんと)の戦いの際には、許褚が休暇をとって外出するときをねらい、徐他(じょた)たちが曹操暗殺を企てた。宿舎まで戻ったが胸騒ぎのした許褚が引き返してみると、刀を懐(ふところ)に帳(とばり)のなかに入っていた徐他は、愕然(がくぜん)とした。その態度で企みに気づいた許褚は、即座に彼らを打ち殺した。また、のちに、馬超(ばちょう)、韓遂(かんすい)と会見した曹操は、許褚だけを供(とも)とするが、許褚が目を怒らせて馬超を睨(にら)みつけたので、馬超は曹操を殺せなかった。こうして許褚は、曹操の信頼を裏切ることなく、曹操のかたわらに侍(はべ)り続け、曹操が亡くなると号泣して血を吐いたという。

[渡邉義浩]

『渡邉義浩著『「三国志」武将34選』(PHP文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android