血胸(読み)ケッキョウ(英語表記)Hemothorax

デジタル大辞泉 「血胸」の意味・読み・例文・類語

けっ‐きょう【血胸】

胸膜腔血液がたまった状態。→気胸血気胸

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六訂版 家庭医学大全科 「血胸」の解説

血胸
けっきょう
Hemothorax
(外傷)

どんな外傷か

 胸腔内に血液がたまった状態を血胸といい、心・大血管損傷、肺損傷、胸壁(きょうへき)血管損傷(内胸動静脈(ないきょうどうじょうみゃく)損傷、肋間(ろっかん)動静脈損傷)などに伴ってみられます(図38)。また、胸腔内に空気と血液がともにたまった状態を血気胸といい、肺損傷の際にみられます。

原因は何か

 相当大きな外力が胸郭(きょうかく)に作用した場合にみられる外傷で、交通事故や高所からの墜落はもとより、挟圧(きょうあつ)外傷(はさまれたことによる外傷)や暴行による胸部打撲(だぼく)などによっても発生します。また、胸部刺創(しそう)切創(せっそう)に伴ってみられることもあります。

症状の現れ方

 胸部外傷後の胸内苦悶(くもん)、胸痛、呼吸困難、チアノーゼ(皮膚などが紫色になる)、顔面蒼白、頻脈(ひんみゃく)、四肢冷汗および冷感などです。

 胸腔内には大量の血液がたまることが可能なので、大量血胸では、循環血液量の減少による出血性ショックを来し、血圧は低下して意識障害が現れ、同時に肺の虚脱(収縮)に基づく呼吸不全が現れます。

検査と診断

 血胸の診断は、胸部の身体所見(視診、聴診触診打診)と胸部単純X線撮影によりなされます。最近では、救急外来に超音波検査装置が常備され、迅速かつ非侵襲的に(体を傷つけることなく)血胸の診断が可能になりました。

治療の方法

 胸腔ドレナージ(コラム)を行って胸腔内にたまった血液を排除し、時間あたりの胸腔内出血量を測定するとともに、輸液輸血を中心とした適切な循環管理を行います。胸腔内への出血が大量であれば、緊急開胸手術を行って出血を制御する必要もあります。

 最近では、血管造影検査で出血源を探し、出血源となっている動脈が特定できたら、血管内に塞栓(そくせん)物質を注入して止血する方法も一般的になりました(経カテーテル動脈塞栓術)。

応急処置はどうするか

 血胸に対する応急処置はとくにありません。出血性ショックの症状がみられたら、負傷者をあお向けにして下肢を高くし、血液が脳と心臓に少しでも多く供給されるよう努める必要があります。

 救急車が到着するまでの間、体温が低下しないよう、毛布衣類をかけて、負傷者の保温を図ることも大切です。

益子 邦洋


血胸
(呼吸器の病気)

 胸腔内に出血し、血液がたまった状態をいいます。

 原因には、外傷性と非外傷性があります。外傷性は、肋間動脈、内胸動脈などの胸壁の血管、横隔膜(おうかくまく)の血管、肺実質などが損傷を受けて出血する場合です。非外傷性では、気胸(ききょう)(胸壁と癒着している索状組織がはがれるため)、悪性腫瘍、大動脈(りゅう)の破裂、肺梗塞(はいこうそく)などが原因となります。

 外傷によって肺実質が損傷を受けると、血痰(けったん)喀血(かっけつ)を伴います。出血量が多いとショック状態に陥ることもあります。

 治療は、胸腔ドレナージにより血液を排除します。出血が続く場合には手術を行うこともあります。

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改訂新版 世界大百科事典 「血胸」の意味・わかりやすい解説

血胸 (けっきょう)
hemothorax

胸の中(胸腔)に血液が貯留した状態をいう。胸腔に隣接した部分の血管が破れ,血液が流出,貯留するためで,胸壁外傷,肺の損傷,動静脈の断裂・破裂などにより発生する。気胸を起こして外気がともに貯留すると血気胸hemopeumothoraxの状態となる。一種の出血であるから,量が多くなるときは外科的に止血しなければならない。また,貯留した血液が多いときは,血液が吸収されずに,胸腔の感染や貯留血液の器質化による呼吸障害を起こすため,貯留した血液を除去しなければならない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「血胸」の意味・わかりやすい解説

血胸
けっきょう
hemothorax

胸腔内に血液が貯留した状態をいう。原因としては,外傷,結核,悪性腫瘍,出血性素因によるもの,動脈瘤の破裂などがあげられる。自然気胸から血気胸を起すことも多い。

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世界大百科事典(旧版)内の血胸の言及

【胸膜炎】より

…滲出液が膿性の場合には膿胸(または化膿性胸膜炎),血性の場合には血性胸膜炎とよばれる。なお,外傷や大動脈瘤破裂などにより胸膜腔内に血液が貯留するものは,とくに血胸とよばれる。
[原因]
 胸膜炎の原因はいろいろあるが,最も多いのは結核性胸膜炎,癌性胸膜炎であり,近年後者が増加している。…

【出血】より

…出血を起こした部位ないし臓器により,鼻出血,消化管からの吐血,大便に混じってみられる下血(吐血,下血を総称して消化管出血という。出血が少量のとき,〈潜出血〉といい,潜血反応によって確かめられる),気管支・肺からの喀血,尿への血尿などがあり,また胸腔内への血胸,心囊内への血心囊などがある。 全身の皮膚,粘膜,漿膜などに点状ないし斑状出血がみられる状態は紫斑と呼ばれる。…

※「血胸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」