家庭医学館 の解説
けっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょうてぃーてぃーぴー【血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)】
全身の細血管、毛細血管(もうさいけっかん)の内側でなんらかの異常がおこり、ここに血栓(けっせん)(血のかたまり)ができます。
この血栓の形成に血小板が多量に消費されて、血小板が減少しておこるまれな病気です。
英語の病名(Thrombotic Thrombocytopenic Purpura)の頭文字をとって、TTPともいいます。
[原因]
原因は、よくわかっていません。なんらかの血小板を固める因子が現われる、血小板が必要もなく固まるのを防いでいる因子が不足する、なんらかの免疫(めんえき)の異常がおこる、などといったことが原因ではないかと考えられています。
[症状]
紫斑病に共通の、皮下(ひか)や粘膜(ねんまく)からの出血、内臓からの出血といった症状だけではなく、細血管や毛細血管に血栓ができる際に、赤血球(せっけっきゅう)が血栓に衝突して、変形したり壊れたりして、溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)(「溶血性貧血」)がおこります。また、からだ中に血栓ができるため、血行が途絶える部分が生じ、その部位によって、けいれんや知覚障害などの精神・神経障害、腎臓(じんぞう)の障害、発熱などがおこります。
急速に悪化し、死亡することの多いおそろしい病気です。
こうしたことから、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)(「播種性血管内凝固症候群(DIC)」)と関係があるのではないかともいわれています。また、全身性(ぜんしんせい)エリテマトーデス(「全身性エリテマトーデス(SLE/紅斑性狼瘡)」)にともなっておこる場合や、薬剤の使用がきっかけでおこる場合もあります。
また幼児に多くみられる溶血性尿毒症症候群(HUS)は、大部分は腸管出血性大腸菌O(オー)-157H7の感染が原因でおこりますが、症状が共通しており、同一の症候群であると考えられ、TTP/HUS症候群とも呼ばれます。
[治療]
まず考えられるのは、血漿交換療法(けっしょうこうかんりょうほう)です。血漿交換療法は、体外に血液を導き、特殊な膜を通すことで、正常な血液成分はそのままとして、障害がある血液成分を、健康な人の血液成分と交換する治療法です。
これは、血栓性血小板減少性紫斑病には、きわめて有効な治療法です。
しかし、血漿交換をせず、たんに健康な血漿を注射するだけでも軽快することがあります。また、血栓の形成をふせぐ抗血小板薬(ジピリダモールなど)やアスピリンを使用する治療も効果的です。これと合わせて、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)を使用することもあります。
抗体の一種である免疫グロブリンG(IgG)の大量の点滴、アルカロイドの一種であるビンクリスチンの使用なども試みられています。
腎不全が進行したHUSの患者さんでは、血液透析も行なわれます。
こうした治療法の進歩によって、現在では、患者さんの約80%は救命されるようになっています。