日本大百科全書(ニッポニカ) 「虫封じ」の意味・わかりやすい解説
虫封じ
むしふうじ
子供の疳(かん)を鎮めるためのまじない。昔は、子供がひきつけや疳をおこしたりするのを、「虫がおきる」「疳の虫」などといい、体内に虫気が生じたからと考えられた。御蔵(みくら)島(東京都)では、三夫婦健在の家から食物をもらって食べさせると治るという俗信もあり、アカガエルのつけ焼きや、マゴタロウムシはよく効くと信じられていた。社寺に参って虫封じの祈祷(きとう)をしてもらうのも一療法で、祭神名とか特定の文字を手のひらに書いて祈祷してもらったり、また呪符(じゅふ)をもらって家の入口や神棚に貼(は)り付けておくという場合が多い。また虫切鎌(がま)とよばれる鎌を、虫封じに霊験(れいげん)あらたかな神仏に奉納して願掛けをすることもある。虫切鎌は社前に数多く奉納されてあるので、そのなかから一つ選んで、虫気の子供の頭、腹、背中をなで回すとよく効くといわれた。
[高野 修]