航跡乱気流(読み)こうせきらんきりゅう(英語表記)wake turbulence

日本大百科全書(ニッポニカ) 「航跡乱気流」の意味・わかりやすい解説

航跡乱気流
こうせきらんきりゅう
wake turbulence

先行する大型機の翼端から発生後方に流れる、互いに反対の向きに回転する二つの円筒形気流の渦(うず)によって、その航跡に発生する乱気流後方乱気流ともいう。後続機に重大な危険を及ぼす可能性がある。飛行中の航空機の揚力は翼面の空気圧の差によって生じるが、この気圧の差が、翼の両端の後ろで周りの空気を巻き込んで、航跡乱気流をつくる。小型機が大型ジェット機の直後の航跡乱気流に入ると、横揺れのため非常に危険な状態になることがある。乱気流の強さは航空機の翼の形、重量および速度によって異なる。

 渦の幅は翼幅の2倍程度の範囲で、水平飛行中の移動方向は、機の下方やや外側に広がりながら毎分約500フィート(約150メートル)の割合で降下し、飛行面の下方約500~1000フィート(約150~300メートル)あたりに残存し、時間の経過とともに消滅する。離着陸時の地表付近の渦は、離陸時は浮揚するころに発生し、着陸時は消滅する。無風状態では、航跡乱気流は地面に当たると横方向に約2~3ノット(時速約4~6キロメートル)の速度で広がっていく。離着陸時、斜め方向より弱い追い風があるときはもっとも注意する必要がある。パイロットは先行機を見て航跡乱気流の発生を想定し、十分な間隔を設定しなければならない。

[青木享起・仲村宸一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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