肥前磁器窯跡(読み)ひぜんじきかまあと

国指定史跡ガイド 「肥前磁器窯跡」の解説

ひぜんじきかまあと【肥前磁器窯跡】


佐賀県西松浦郡有田町、武雄市、嬉野市にある窯跡。指定名称は「肥前磁器窯跡 天狗谷窯跡(てんぐだにかまあと) 山辺田窯跡(やんべたかまあと) 原明窯跡(はらあけかまあと) 百間窯跡(ひゃっけんかまあと) 泉山磁石場跡(いずみやまじせきばあと) 不動山窯跡(ふどうやまかまあと)」。磁器生産の変遷を知るうえで重要な窯跡であることから、江戸時代初期に生産を開始した初期伊万里(いまり)焼(有田焼)の窯跡のうち、旧状をよく保つ天狗谷(有田町白川谷)、山辺田(同町黒牟田)、原明(同町原明)、百間(武雄市山内町)、不動山(嬉野市皿屋谷)の5窯跡と、磁器の原材料供給地である泉山磁石場跡(有田町泉山)が1980年(昭和55)に国の史跡に指定され、1981年(昭和56)に追加指定を受け名称変更された。朝鮮人の陶工・李参平(日本名、金(かな)ヶ江()三兵衛(さんべえ))が、磁器に適した石(磁石)を有田町の泉山で発見し、1616年(元和2)に水と薪に便利な天狗谷に窯を築いたという伝承があるように、有田周辺ではわが国最初の磁器窯の隆盛をみた。江戸時代の終わりには、大小100以上の登り窯があったが、現在ではそのほとんどが失われ、窯跡も50ヵ所ほどが確認されているだけである。1968年(昭和43)、天狗谷窯跡から白磁の肌に呉須の染め付けが鮮やかな有田焼が発掘され、有田の古窯跡の調査が本格化した。天狗谷窯跡は5基以上の階段状連房式の登り窯からなり、50mにも及ぶ窯が発見され、古文書に記された磁器創始の記録に合致するものであった。山辺田窯跡は8基以上の窯跡があり、染め付け大皿を中心に製造していた。原明窯跡は3基以上からなり、陶器と磁器を生産していた。武雄市の百間窯跡は、染め付けを中心に白磁や青磁が焼かれ、多種類の磁器が見られる。嬉野市の不動山窯跡は、染め付け芙蓉手皿や青磁・白磁の焼き物などが出土している。有田町歴史民俗資料館東館・有田焼参考館では、天狗谷・山辺田などの古窯跡から出土した陶磁片などが展示されている。天狗谷窯跡へは、JR佐世保線ほか有田駅から車で約20分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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