羊蹄山(読み)ヨウテイザン

デジタル大辞泉 「羊蹄山」の意味・読み・例文・類語

ようてい‐ざん〔ヤウテイ‐〕【羊蹄山】

北海道南西部の火山。円錐状をなし、蝦夷富士えぞふじとも。標高1898メートル。山麓はアスパラガスジャガイモの産地、また、多くの湧水がある。後方羊蹄山しりべしやま

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精選版 日本国語大辞典 「羊蹄山」の意味・読み・例文・類語

ようてい‐ざん ヤウテイ‥【羊蹄山】

北海道南西部、渡島(おしま)半島の基部にある円錐火山。支笏洞爺(しこつとうや)国立公園の一部。標高一八九八メートル。アイヌ語名マツカリヌプリ。蝦夷(えぞ)富士。後方羊蹄(しりべし)山。

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日本歴史地名大系 「羊蹄山」の解説

羊蹄山
ようていざん

北海道西部、後志山地中部に位置し、後志支庁虻田あぶた倶知安くつちやん町・京極きようごく町・喜茂別きもべつ町・真狩まつかり村・ニセコ町にまたがる山。近世よりシリベシ、後方羊蹄しりべし山とも記され、またその秀麗な富士山型から蝦夷富士ともよぶ。標高一八九三メートル。北西のニセコアンヌプリ(一三〇八・五メートル)、南東の尻別しりべつ(一一〇七・四メートル)、南西の昆布こんぶ(一〇四五・一メートル)などの羊蹄火山群の主峰で、渡島半島を含む道南西部の最高峰。基底の直径約一二キロのコニーデ型独立成層火山で、約二万五〇〇〇年前に噴火を開始、大きく三期の安山岩質溶岩噴出期があり、二期目で本体の大部分が形成され、約一万三〇〇〇年前の三期目で頂上に直径約七〇〇メートル・周囲約三キロ・深さ約二〇〇メートルの大釜とよぶ爆裂火口から溶岩を流し、本体が完成。この火口の外輪山北側に母釜・子釜とよぶ小さな火口をもつ北山、西麓の一合目に半月はんげつ湖とよぶ小爆裂口、北麓の二合目に富士見山とよぶ火山砕屑丘、南西麓の三合目に南コブとよぶ溶岩噴出丘など六個の寄生火山がある。日本火山予知連絡会が平成一五年(二〇〇三)一月、活火山定義の過去活動範囲を一万年前(更新世と完新世の境界)に延長、当山は区分上は活火山。

近世より「夷地第一の高山也」といわれ(東海参譚)、「尻別嶽」(「和漢三才図会」所載蝦夷之図、「駅路抵記」)、「シリヘツ山」(谷「蝦夷紀行」)、「シリベツノボリ」(風俗人情之沙汰)、「後方羊蹄山しりべしやま(「蝦夷日誌」二編)、「後方羊蹄岳」(観国録)、「後方羊諦岳」(春日紀行)などとみえる。

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改訂新版 世界大百科事典 「羊蹄山」の意味・わかりやすい解説

羊蹄山 (ようていざん)

北海道南西部,渡島(おしま)半島の基部にある火山。標高1898m。後志(しりべし)火山群の一つで,南東にある尻別岳(1107m)に対してかつては後方羊蹄(しりべし)山と呼ばれた。富士山に似た山容をもち,蝦夷富士とも呼ばれる。直径約13kmのほぼ円形の基底をもつ円錐形の成層火山で,火口は直径約700m,深さ約200mのすり鉢型をなしている。融雪期には水をたたえ,父釜と呼ばれる火口湖となる。噴火の記録はみられない。山体は輝石安山岩が主で,側火山もみられ,北西麓にある半月湖は,爆裂火口中に小溶岩丘が噴出して半月形を呈したものである。山体には西側を除いて雨水や雪食によって生成された放射谷が発達しており,その下端に土石流の堆積物がある。斜面には植物の垂直分布がみごとに展開されており,1921年には国の天然記念物に指定されている。山麓ではナラやダケカンバ,六合目まではエゾマツトドマツの原生林をなし,これより上はハイマツ帯となっている。山頂部にはミヤマキンバイ,エゾフジタンポポなどからなるお花畑がある。登山口には比羅夫(ひらふ)口,俱知安(くつちやん)口,真狩別(まつかりべつ)口などがあるが,比羅夫口がよく利用されている。登山道はよく整備されており,9合目付近には避難小屋もある。山頂からは東に恵庭(えにわ)岳,樽前山や支笏(しこつ)湖を見おろし,南は眼下に洞爺(とうや)湖,昭和新山噴火湾を,西はニセコ連峰,日本海をのぞめる。
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百科事典マイペディア 「羊蹄山」の意味・わかりやすい解説

羊蹄山【ようていざん】

北海道南西部,倶知安(くっちゃん)町南東にある成層火山。標高1898m。南の尻別岳(前方羊蹄山)に対し後方羊蹄山といい,蝦夷(えぞ)富士,シリベシ山,マッカリヌプリともいう。安山岩からなり爆裂火口と寄生火山をもつ活火山である。エゾマツ,トドマツの原始林におおわれ,頂上に高山植物が生育。支笏洞爺(しこつとうや)国立公園に属し,倶知安口,比羅夫(ひらふ)口から登山路がある。
→関連項目喜茂別[町]京極[町]倶知安[町]ニセコ[町]日本百名山

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「羊蹄山」の意味・わかりやすい解説

羊蹄山
ようていざん

北海道南西部、渡島(おしま)半島の基部にある山。後志火山群(しりべしかざんぐん)の一つで、標高1898メートル。円錐(えんすい)状火山で蝦夷富士(えぞふじ)ともよばれる。後志総合振興局管内の倶知安町(くっちゃんちょう)、ニセコ町、真狩村(まっかりむら)、喜茂別町(きもべつちょう)、京極町の境界にある。基底は新第三系で、その上に輝石安山岩、紫蘇(しそ)輝石安山岩がのる。頂上には周囲2キロメートルの楕円(だえん)形の火口がある。山体は放射谷により刻まれ、春先には崩壊が著しい。北西麓(ろく)にある半月湖は爆裂火口跡とされる。標高650メートルまではナラ、ダケカンバなど、1050メートルまではエゾマツ、トドマツ、それ以上はハイマツで覆われ、ミヤマエンレイソウ、コケモモなどの高山植物がみられる。植生の垂直分布の変化がよくわかり、「後方羊蹄山の高山植物帯(しりべしやまのこうざんしょくぶつたい)」として国の天然記念物に指定されている。登山口は比羅夫(ひらふ)口、真狩口、留産(るさん)口、京極口がある。頂上からは洞爺(とうや)湖、有珠(うす)山、ニセコアンヌプリなどが眺められ雄大である。山麓ではジャガイモ、アスパラガス、サトウダイコンなどを産す。

[瀬川秀良]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「羊蹄山」の意味・わかりやすい解説

羊蹄山
ようていざん

北海道南西部にそびえる後志火山群(しりべしかざんぐん)の一つで,円錐(コニーデ)形の活火山。別称蝦夷富士。標高 1898m。基底の直径約 12kmに達する成層火山で,輝石安山岩と火山砕屑物からなり,頂上には大釜と呼ばれる直径約 700mの火口がある。山頂を中心に多くの放射谷が発達し,雪解け,大雨の際には岩屑流を押し出して,西側を除く山麓部に多くの被害を与える。標高 1200m以上にはエゾツガザクラ,イワイチョウキバナシャクナゲなど約 260種の高山植物の群落があり,国の天然記念物に指定。山麓はジャガイモ,テンサイ,アスパラガスなどを産する北海道有数の畑作地域。1949年指定の支笏洞爺国立公園に属する。

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事典 日本の地域遺産 「羊蹄山」の解説

羊蹄山

(北海道虻田郡喜茂別町;北海道虻田郡京極町;北海道虻田郡倶知安町;北海道虻田郡真狩村)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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