日本大百科全書(ニッポニカ) 「粟田口(狂言)」の意味・わかりやすい解説
粟田口(狂言)
あわたぐち
狂言の曲名。大名狂言。「粟田口」とは、京都の粟田口に住んだ刀工たちがつくった刀をいう。粟田口比べがあるので、大名(シテ)はそれを求めさせに太郎冠者(たろうかじゃ)を都へやるが、主従とも粟田口が何であるか知らない。太郎冠者は粟田口生まれだというスッパ(詐欺師)を連れて帰る。大名が粟田口について書いた書物と照合すると、スッパは自分の条件と巧みにあわせ雇われる。早速、大名が連れて外出し、「粟田口」「藤右馬允(とうまのじょう)」と名をよび、機敏な返事を喜んでいるすきに、スッパは持たされた太刀(たち)、小刀を盗んで逃げてしまう。大名はやっとだまされていたことに気づく。物と人を取り違えるのが笑いを誘うが、大名の鷹揚(おうよう)さも見どころである。
[小林 責]
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