稲子・蝗・螽(読み)いなご

精選版 日本国語大辞典 「稲子・蝗・螽」の意味・読み・例文・類語

いな‐ご【稲子・蝗・螽】

〘名〙
① バッタ科の昆虫の総称。コバネイナゴハネナガイナゴエゾイナゴなど。体長約四センチメートル。体は黄緑色で、はねは淡褐色。後ろあしは前の二対のあしに比べて大きく、はねるのに適する。イネ科植物の葉を食べる害虫。夏から秋にかけて多く見られ、秋に土中産卵幼虫は不完全変態で、数回脱皮して成虫となる。食用になり、タンパク質、鉄分、ビタミンAに富み栄養価も高く、古くから佃煮(つくだに)などに用いられる。いなごまろ。《季・秋》
続日本紀‐大宝二年(702)三月壬申「因幡伯耆。隠伎三国。蝗損禾稼
※俳諧・七番日記‐文化七年(1810)一〇月「枯れがれの野辺に恋する螽哉」
② 建築で、天井板の継ぎ目にすきまができるのを防ぐため、裏から板を押えつける竹片、または木片。竿縁天井(さおぶちてんじょう)の羽重部(はがさねぶ)に用い、金属製のものもある。〔日本建築辞彙(1906)〕
[語誌](1)語源は「稲の子」とするのが妥当と思われるが、古くは、擬人化して接尾語「まろ」を加えた「いなごまろ」の例が多い。
(2)「蝗」の字は挙例の「続日本紀」に見えるが、「螽」とともに、イナゴの訓が示されるのは中世以後である。

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