石生郷（読み）いわなすごう

日本歴史地名大系

石生郷
いわなすごう

• 岡山県：備前国
• 磐梨郡
• 石生郷

「和名抄」高山寺本に「以波奈須」、東急本に「伊波奈須」の訓がある。和気郷と同様に「続日本紀」天平神護二年（七六六）五月二三日条の吉井川以西の郷名にはみられないが、「文徳実録」嘉祥三年（八五〇）八月一一日条に「磐梨郡少領外従八位上石生別公長貞、於郡下石生郷雄神河、獲白亀一枚」とあり、この時までに当郷が成立していたことは確実。郷域については、「日本地理志料」「大日本地名辞書」「岡山県通史」とも、明治二二年（一八八九）成立の石生（いわぶ）村に含まれる現和気（わけ）郡和気町田原上（たわらかみ）・田原下・原（はら）・本（ほん）などの吉井川西岸部に比定している。推定郷域内には、大明神（だいみようじん）古墳・石根依立神社西（いわねよりたてじんじやにし）古墳などの約三〇メートル規模の前方後円墳と推定されている古墳や、八世紀末ないし九世紀の製鉄炉である天皇（てんのう）遺跡などがある。

石生郷
いそうごう

• 兵庫県：丹波国
• 氷上郡
• 石生郷

「和名抄」所載の郷。同書高山寺本は「原負」とするが、後述する木簡の表記からみて「石負郷」の誤記。訓は、高山寺本「以曾不」、東急本「伊曾布」。平城宮造酒司跡から「（表）丹波国氷上□石負里□□(氷部カ)□□」「（裏）俵納白米五斗　和銅三年」および、和銅年間（七〇八―七一五）に石負里の笠取直子万呂が白米五斗を貢進したことを記した木簡が出土しており、奈良時代初期、当郷の白米が酒造に用いられたことがわかる。地名の表記には石生・石負の両方が用いられた。

出典　平凡社「日本歴史地名大系」