疎句(読み)そく

精選版 日本国語大辞典 「疎句」の意味・読み・例文・類語

そ‐く【疎句】

〘名〙 和歌の第一句から第五句までの、または連歌の長句五・七・五の上五から下五までの、それぞれどの句も音調的にも語法的にも切れているが、意味内容がつながっているもの。各句の続きぐあいについていうほか、二句間の付合についてもいう。親句(しんく)に対する。
※竹園抄(13C後)「疎句といふは、ひびきも通はず詞もきるれども、こころのはなれぬ歌也、これはよくよくてびろなる事なるべし」
[語誌]藤原為顕著とされる歌学書「竹園抄」では和歌一首における上句と下句に関して親句(しんく)重点をおいている。一方、「愚秘抄‐鵜本」は疎句を重視する。この論は正徹の歌論や心敬の連歌論に影響を与え、心敬著「ささめごと」では、親句・疎句は付合の上におけることとして論じられ、疎句が理想とされている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の疎句の言及

【元禄俳諧】より

…それは主観的な色どりの濃い風流志向であり,いやみに流れると〈かゝる世は蝶かしましき羽音かな 信徳〉(和及編《雀の森》1690),〈御代の春蚊屋の萌黄にきはまりぬ 越人〉(元禄4年歳旦(さいたん)帳)などになり,詩的に結晶すると〈凩(こがらし)の果はありけり海の音 言水(ごんすい)〉(言水編《新撰都曲(みやこぶり)》1690),〈うぐひすの細脛よりやこぼれむめ 才麿〉(文十編《よるひる》1691)や,芭蕉らの数々の佳吟となった。連句の付合(つけあい)では“疎句(そく)”が重んじられ,心や景気による“うつり”が中心となり,蕉風の“匂ひ”“響き”“走り”など隠微な付合の呼吸を生み育てたが,井原西鶴らはこれを連歌への回帰とみて理解を示さず,故事・古典のことばや縁語を“あしらひ”とする“親句(しんく)”の俳諧に終始した。元禄末年になると,疎句化の傾向はますます進み,“前句付(まえくづけ)”の流行とあいまって,付合の疎外を招き,一句立て偏重の思想を育て,やがて連句を解体へと導くに至るのである。…

【付合】より

…芭蕉自身にも〈付句十七体〉の伝授があったという(《去来抄》)。しかし,細分化し複雑化した付合も,煮つめれば,〈奥山に船漕ぐ音は聞ゆ也/なれる木のみやうみ渡るらん(紀貫之)〉(《菟玖波集》)のような,ことばの応接による単純な謎解き問答体を原初の風体とする〈親句(しんく)〉と,〈青天に有明月の朝ぼらけ(去来)/湖水の秋の比良のはつ霜(芭蕉)〉(《猿蓑》)のような,余情豊かな景曲体を典型とする〈疎句(そく)〉の2体に整理される。付合文芸の2系列である連歌も俳諧も,その歴史は親句から疎句への推移としてとらえられるであろう。…

※「疎句」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」