物部の(読み)もののふの

精選版 日本国語大辞典 「物部の」の意味・読み・例文・類語

もののふ‐の【物部の】

朝廷に仕える氏族の数の多いところから「八十氏人(やそうじびと)」「八十伴緒(やそとものお)」にかかる。
万葉(8C後)一八・四一〇〇「物能乃布能(もノノフノ)八十氏人も吉野川絶ゆることなく仕へつつ見む」
② 数が多い意で、「八十(やそ)」および、その複合語や「八十」と同音を含む地名にかかる。
※万葉(8C後)三・二六四「物乃部能(ものノふノ)八十宇治川の網代木(あじろき)にいさよふ波の行くへ知らずも」
③ ②の「八十宇治川」にかかることから転じて、地名「宇治」にかかる。
※万葉(8C後)一三・三二三七「あをによし 奈良山過ぎて 物部(もののふの) 宇治川渡り」
④ 地名「岩瀬」にかかる。かかり方は、数多い意で「い(五十)」と同音を含むところからか。一説に、多く集まる意の古い動詞「いわむ(満)」の「い」と同音を含むところからとも。
※万葉(8C後)八・一四七〇「物部乃(もののふノ)磐瀬の社(もり)のほととぎす今も鳴かぬか山の常陰(とかげ)に」
後世、「もののふ」を武士の意に解し、武士の持つ「矢」と同音を含む地名「矢田野」「矢野」にかかる。
※続後撰(1251)秋上・二八〇「もののふの矢田野のすすき打ち靡き男鹿妻よぶ秋は来にけり〈寂延〉」
[補注]①②④のかかり方について、武人の射る矢の意で、「矢」「射(い)」と同音を含むところからとする説もある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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