燕(市)(読み)つばめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「燕(市)」の意味・わかりやすい解説

燕(市)
つばめ

新潟県中央、信濃川(しなのがわ)と中ノ口川(なかのくちがわ)分流点にある市。洋食器の町として知られる。1954年(昭和29)燕町と、小池、松長、小中川(こなかがわ)の3村が合併、市制施行。2006年(平成18)西蒲原郡分水町(ぶんすいまち)、吉田町(よしだまち)を合併。古くは、信濃川三角州の自然堤防上の渡し場として発生し、近世は中ノ口川通船の河岸場(かしば)町として栄えた。越後(えちご)の一宮(いちのみや)の弥彦(やひこ)参道の入口で、JR弥彦線、越後線が通じ、新潟交通の分岐点にもあたる交通上の要衝で、最近は上越新幹線の燕三条駅や、北陸自動車道の三条燕インターチェンジも設置され、目覚ましい発展を遂げている。

 洋食器の町としての発展は、近世中期三条金物町の一環として、やすり、きせる、銅器などを特産とする町鍛冶(かじ)から始まり、第二次世界大戦後、金物業の不振から洋食器の試作に転換して、輸出洋食器生産の一大躍進をみ、全国輸出洋食器の85%(1996)を占める文字どおりの洋食器の町に発展した。その生産過程は、地金(じがね)づくりをする親工場から、研摩めっきなどの下請工場に渡って、ふたたび親工場に返し、仕上げをして輸出する模式的な分業零細企業で、その家内的町工場数は2173に及び県下一であった。最近、輸出洋食器の不振で、金属ハウスウェアを筆頭に、プラスチック製品、農機具、ゴルフクラブなどの多角的な軽金属工業にかわり、工業団地が造成されている。手作りでしかできない鎚起銅器(ついきどうき)の技術は県の無形文化財に指定されている。面積110.94方キロメートル(境界一部未定)、人口7万7201(2020)。

[山崎久雄]


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