焼きいも(読み)やきいも

日本大百科全書(ニッポニカ) 「焼きいも」の意味・わかりやすい解説

焼きいも
やきいも

サツマイモの焼いたもの。甘藷(かんしょ)(サツマイモ)が関東地方に普及したのは、青木昆陽(こんよう)の『蕃藷考(ばんしょこう)』(1735)が出版された以降のことで、18世紀後半には周辺地から江戸に移入されるようになった。江戸の町に焼きいも屋が現れたのは、1793年(寛政5)の冬で、本郷の木戸番が焙烙(ほうろく)で蒸し焼きにしたいもを売り、「八里半」と書いた行灯(あんどん)を看板にしたという。栗(くり)(九里)に近い味という謎(なぞ)である。その後、栗より(九里四里)うまいという意味で「十三里」と書いた看板も現れたが、幕末には手短に「丸焼きいも」「○(まる)焼」と書くのが多かった。大坂では、焼きいものことを「ほっこり」といい、馬の絵の胴のあたりに「イ」の朱字を入れた。「馬(旨(うま))いほっこり」の洒落(しゃれ)である。焼き方は、一般に巨大なかまどを築き、鋳物の平鍋(ひらなべ)をかけて、小いもはまるごと、大きいものは斜(はす)切りにして並べ、蓋(ふた)をして蒸し焼きにする。小石を下から火で加熱して焼き、その上にいもをのせる「石焼きいも」の引き売りが目だつようになったのは、昭和初年のことである。

多田鉄之助

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