無い袖は振れない(読み)ナイソデハフレナイ

デジタル大辞泉 「無い袖は振れない」の意味・読み・例文・類語

そでれ◦ない

実際にないものはどうにもしようがない。持っていないものは出せない。「援助はしたいが―◦ない」

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ことわざを知る辞典 「無い袖は振れない」の解説

無い袖は振れない

もともと袖がないのだから、振りようがない。お金や財産が実際にないのだから、どうにもしようがないというたとえ。

[使用例] 出来ることなら、わしも何とかしたい。したいけど、何度も言う通り、無い袖は振れまへん。千や二千の金、わての所に無いと言うと、信用けんかも知れんが、正真正銘、おはずかしながら、ホンマの話が、此の半月ばかり、五百とまとまった物が無いのです。[三好十郎*好日|1941]

[使用例] われわれはあきらめているのだ。いな、われわれ自身が考えるさきに、われわれの心のなかで、別人があきらめてしまっている。戦争に負けた。ない袖はふれぬ。二合五勺の、それに芋がまじっても、仕方がない、と[坂口安吾*二合五勺に関する愛国的考察|1947]

[解説] お金にゆとりがなく、支払いや返済、援助などを求められても、現実にとうてい無理だ、と断るときに用いられます。「袖を振る」のは、別れを惜しむときや好意ないし愛情を示す場面ですが、この表現が、なぜ、お金に結びつくのかは、残念ながら、よくわかりません。
 「韓非子」の「鄙諺曰、長袖善舞、多銭善賈」に由来するという説がありますが、長い袖があれば上手に舞うことができ、資本が十分にあれば商売がうまくいく意で、袖と銭が出てきても、内容的関連があるとは思えません。ともあれ、相手の言い分もわからなくはないが、好意を示そうにもどうにもならないことを比喩を用いて形の上では婉曲に、実質的にはきっぱりと示した表現といえるでしょう。

中国〕巧媳婦也做不出没米粥(器用な嫁でも米なしにお粥は作れない)

朝鮮없는 꼬리를 흔들까(ない尻尾が振れようか)

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