漱石枕流(読み)ソウセキチンリュウ

デジタル大辞泉 「漱石枕流」の意味・読み・例文・類語

そうせき‐ちんりゅう〔‐チンリウ〕【×漱石枕流】

石にくちすすぎ流れにまくら

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

四字熟語を知る辞典 「漱石枕流」の解説

漱石枕流

負け惜しみが強く、自分の意見をあくまでも押し通したり、こじつけのうまいことのたとえ。

[使用例] (夏目漱石が)この雅号を用い出したのは明治二十二年からの事で、言うまでもなく「枕流漱石」の故事から出ている。「流れにくちそそぎ、石にまくらす」というべきところを、しんそんが「流れに枕し、石に漱ぐ」とやってしまい、とうとうそれで強情を張りとおしたという事で、強情張りの変屈者のことだ[松岡譲*ああ漱石山房|1967]

[使用例] 昔の中国に「漱石枕流」なる成語がある。本来「石に枕し流れに口すすぐ」というべきを逆にしたのは、誤りを承知の上の負けおしみなのだ[渋沢秀雄*大いなる明治|1979]

[解説] このことばは、慣用句として使うよりも、故事の一部として紹介されることが多いようです。上の例文にも出てくる故事ですが、改めて説明します。中国の南北朝時代の「世説新語」や、唐代の「晋書」にある話です。
 政治家のそんけい(孫楚)は若い頃、いんとんして「ちんせきそうりゅう」の生活をしたいと考えました。石を枕に寝て、川の流れにくちすすぐ(うがいをする)という生活です。
 ところが、友人の王武子にこの話をする時、誤って「漱石枕流」と言ってしまいました。「石にくちすすぎ、流れに枕す」とは何のことだ、と王武子にからかわれます。孫子荊は負けずに「流れを枕に寝て耳を洗うのだ。石を口に含んで歯を磨くのだ」とこじつけて答えました。
 夏目漱石の号も、ここから来ています。孫子荊の負けず嫌いの態度が、作家・漱石の気に入ったのでしょうか。
 ちなみに、当て字で「さすが」を「流石」と書くのも、このうまい言い訳から来ていると言われます。

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