温室植物(読み)おんしつしょくぶつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「温室植物」の意味・わかりやすい解説

温室植物
おんしつしょくぶつ

主として戸外で育つ露地植物に対して、暖房設備があり、ガラス、「ファイロン」(ガラス繊維の板)、ビニルなど採光条件を備えた温室内にある植物をさし、熱帯・亜熱帯植物が多く、メロンやブドウなどの果菜、果樹類も含まれる。広義には、加温しない室内で育てる植物も含まれるが、厳密にはこれは暖室植物とよんで区別している。

[川上幸男]

種類

代表種を列挙すると次のとおりである。

[川上幸男]

一年草

カルセオラリア、キュウリ、キンギョソウシネラリア、スイートピー、ストック、トマト、プリムラ、ミムルス、メロン、ロベリアなど。

[川上幸男]

多年草

アカリファ、アスパラガスアナナスカーネーションクンシランシペラスストレリチア、セブリナ、ゼラニウム、セントポーリアフィロデンドロンベゴニアペペロミア、マーガレット、洋ラン類や熱帯・亜熱帯シダ類など。

[川上幸男]

花木

アカシア、ハイドランジアハイビスカスバラフクシア、ポインセチアなど。

[川上幸男]

木本性植物

クロトン、ゴムノキ、コルディリネ、サボテン類、パキラ、ラベラナなど。

[川上幸男]

果樹

バナナ、パパイア、ブドウ、マンゴー、リュウガンレイシなど。

[川上幸男]

一般的性質

寒さに非常に弱いので、とくに冬は温室内を原生地の条件になるべく近づけるようにしないと、うまく生育しない。温度、湿度、光、水分の条件に露地植物以上に敏感で、室内であるだけに換気はとりわけ重要である。また地植えの場合には土壌の客土も考慮する必要がある。

[川上幸男]

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改訂新版 世界大百科事典 「温室植物」の意味・わかりやすい解説

温室植物 (おんしつしょくぶつ)

外気温度の低い冬の期間,生育に支障をきたさないようにガラス室あるいはこれに類似する施設(ビニル,合成樹脂板などを屋根覆材に使用した建物)に収容して育てる植物のことで,おもに無加温もしくは加温(暖房する)の状態で栽培する。これらの植物には自然の気候状態では春にならないと花の咲かない観賞植物を,趣味あるいは生産栽培のような経済上の理由により,厳寒期から早春にかけて花を咲かせることを目的として温室で栽培されるものが多い。その代表的なものとしてシクラメン,プリムラ,ベゴニアなどの鉢花や,カトレア,デンドロビウム,シンビジウムなどの洋ラン類などがあげられる。また冬の寒さにひじょうに弱い熱帯原産の各種観賞植物,すなわちインドゴムノキ,テーブルヤシ,オリヅルランなどの観葉植物や,さらにはハイビスカス,ブーゲンビレア,ゲンペイクサギといった花の美しい熱帯花木,またサボテン,多肉植物などの乾燥地植物,ネッタイスイレン,ミズオジギソウなどの熱帯産水草類も温室植物の仲間にふくまれる。

 また市場に早く出荷するために温室で栽培する植物には,切花を目的とするキク,カーネーション,バラ,ストレリチアや切葉を目的とするシダ類,アスパラガスなどや果菜類があるが,これらはとくに温室植物とは呼ばない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の温室植物の言及

【有用植物】より

…観賞用に栽培された植物の種は正確に算定はできないが,3万種をこえるであろう。 観賞植物には,公園,街路,庭園などに森林的な景観を造る樹木や花木,それに付随した花壇に植えられる草本性の花卉園芸植物,さらに多くは室内の弱光の下で観賞される観葉植物,温度を制御した温室で栽培される温室植物といったいろいろな群に分けられるが,分類は観賞植物の多様さから便宜的なものである。また一年草,多年草,球根植物,多肉植物,樹木といった生活型を中心とした分類や,切花,鉢物といった栽培利用形態からも分類されている。…

※「温室植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」