キンギョソウ(読み)きんぎょそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンギョソウ」の意味・わかりやすい解説

キンギョソウ
きんぎょそう / 金魚草
[学] Antirrhinum majus L.

ゴマノハグサ科(APG分類:オオバコ科)の多年草。園芸上は秋播(ま)き一年草として扱う。ヨーロッパ原産。欧米をはじめ日本でもアンテリナムと称して広く切り花として温室栽培され、暖地ではハウス栽培または露地栽培もある。草丈により分類され、高性種は0.9~1.2メートルで、切り花用に栽培される。中高性種は50~80センチメートルで、コロネット種は大輪で花穂が長く風に強く、またマダムバタフライ種は八重咲きでアザレア状の花形花壇用とするが、切り花にもできる。矮性(わいせい)種は20~30センチメートルで、フローラルカーペット種、リトルダーリン種などがあり、花壇、プランター鉢植えに適する。

 花色は豊富で、白、黄、桃、赤、橙(だいだい)、藤紫(ふじむらさき)などあり、いずれも基部から分枝して茎頂キンギョに似た花を穂状に多数つける。花は一重咲き、八重咲きとあり、花色、花形とも変化に富む。切り花栽培では温室やハウスで初夏に播種(はしゅ)し、秋から翌年の春まで採花できるが、普通は露地で秋に播種すると翌年の5月に開花する。播種は、種子が細かいのと幼苗期に立枯病にかかりやすいので、鉢で清潔な用土に薄く播種して覆土はせず、鉢底から吸水させると結果がよい。発芽後は平箱などに5、6センチメートル間隔に仮植えするが、浅植えにし子葉土中に入らないようにする。深植えはよくない。仮植え後30~40日で定植する。花壇植えは25~30センチメートル間隔、切り花用は20~25センチメートル間隔とする。花壇植えの矮性、中高性種は霜よけをすると、茎頂も痛まず結果がよい。切り花用の高性種は本葉が6、7枚のころ摘心をすると基部からよく分枝して花茎数が多くなる。春先になるとアブラムシが多発するので、「エカチン」粒剤で予防し、発生後は「ランネート」などで駆除する。矮性種など花壇植えの場合は、1花穂の花が終わりしだい、途中から摘み取って種子ができないようにすると、株が弱らずに長い間咲かせられる。

[金子勝巳 2021年8月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「キンギョソウ」の意味・わかりやすい解説

キンギョソウ
Antirrhinum majus L.

花壇や鉢植え,切花に適したゴマノハグサ科の多年草。原産地は南ヨーロッパ,北アフリカ。改良された園芸種には高さ20~30cmの矮性種や80cmになる高性種がある。葉は楕円形で対生し,茎は直立性で先端に総状に花をつける。花は合弁花で花筒の先端は2唇形となり,花冠片のうちの2片が上唇弁を,3片が下唇弁を形成している。花筒を指で押さえると花が口を開くので,snapdragonの英名がある。めしべは1本,おしべは4本のうち2本は長く2本は短い。果実は熟すと三つの小穴から種子がこぼれ出るが,奇妙な顔のように見える。ふつう秋にまき,霜よけ下で苗を越冬させて4~5月に咲かせるが,暖地での切花栽培には8月にまき,ハウスで年末か早春に開花させる。最近の品種は矮性の交配雑種一代系統の品種が多いので花色や草丈,開花期がそろうが,これらを自家受粉させて採った種子を栽培すると形質にばらつきが生じる。
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百科事典マイペディア 「キンギョソウ」の意味・わかりやすい解説

キンギョソウ

地中海沿岸地方原産のゴマノハグサ科の多年草。園芸上では普通秋まきとし,冬〜春開花させ,一年草として扱う。花は茎の頂に総状につき,太い筒形の花冠の上部は仮面状をなす。草たけは20〜90cmで,矮性(わいせい)品種は花壇・鉢植,高性品種は切花用にされる。F1品種,四倍体品種,八重咲品種,あるいはベル咲と呼ばれるバタフライ系品種等,園芸品種が多く,花色も赤,ピンク,だいだい,黄,白,紫など変化に富む。

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