ベゴニア
べごにあ
[学] Begonia
シュウカイドウ科シュウカイドウ属(ベゴニア属)の総称。草本または半低木。オーストラリアを除く世界の熱帯から亜熱帯に広く分布し、1400種以上が知られる。茎は直立するもの、つるとなって他物に絡まるもののほか、太い根茎となって地面をはうもの、地下に塊茎があるものなどがある。葉の形や色彩、模様、大きさ、毛の有無や色など変異が多い。雌雄同株。普通、茎頂に近い葉腋(ようえき)から花柄を出し、その先が3~7回、二又分岐を繰り返し、雄花を咲き進め、最後に雌花の大きな花房となって垂れ下がる。雄花は大きな丸形の2弁と小さな杓子(しゃくし)形の2弁からなり、雄しべは多数。雌花は大小不同の5弁からなり、雌しべは1本。子房は下位で、普通3室であるが、まれに2~5室、3枚の翼状突起があり、中に多数の胚珠(はいしゅ)がある。柱頭は3裂し、おのおのさらに2裂して先がねじれるか鶏冠状になる。
[植村猶行 2020年2月17日]
大きな属であり、80余節に分類されるが、園芸上は茎の形や性質、根の形態から次の8系統に分類されている。
[植村猶行 2020年2月17日]
茎がまっすぐに立ち上がって伸びるグループで、茎の形や出方により、さらに矢竹型、叢生(そうせい)型、多肉茎型、つる性型に分けられる。
[植村猶行 2020年2月17日]
太く多汁質で節間の詰まった根茎が地面をはって広がるグループで、本属のなかではもっとも種類が多い。根茎の形によって横走根茎型、直立根茎型、半木立ち型、地中茎型に分けられる。葉の美しいものが多いので、観葉ベゴニアと総称することもある。大部分は冬から早春に開花し、比較的弱光線にも耐えるが、空中温度が高い所でよく育つ。
[植村猶行 2020年2月17日]
地下に球根または塊茎がある原種、およびそれら原種どうしの単純な交配種であるが、比較的種類は少ない。
[植村猶行 2020年2月17日]
南アメリカのアンデス山系に野生する球根性ベゴニアであるボリビエンシスB. boliviensis A.DC.を中心に数種の原種を複雑に交配して育成された、多彩で美しい夏咲きベゴニアで、地中に塊茎がある。茎が立ち上がって伸びるスタンド型と、茎が垂れ下がるハンギング型とに分かれる。花色が豊富で美しいものが多い。
[植村猶行 2020年2月17日]
インドのアッサム地方原産の根茎性ベゴニアであるレックスB. rex Putz.をもとに、葉の美しいいくつかの原種を交配して育成されたもので、花は秋から冬にかけ観賞できる。栽培品種は1000種に近い。
[植村猶行 2020年2月17日]
木立ち性ベゴニアの叢生型に属するブラジル原産のセンパフローレンスB. semperflorens Link et Ottoをもとに改良された矮性(わいせい)種で、高さ15~40センチメートル。緑葉種と銅葉種に分かれ、白、淡黄色の斑(ふ)入り葉種もある。10℃以上の所では四季を通じて株を覆って咲き続けるので、花壇や鉢植え、プランター用として、世界中で数百種が栽培される。
[植村猶行 2020年2月17日]
英名をクリスマス・ベゴニアChristmas begoniaといい、クリスマスを中心に11月ころから春にかけて咲く、人工育成種である。
[植村猶行 2020年2月17日]
elatior begonia. ソコトラーナと球根ベゴニアの園芸品種を交雑して作出された人工育成種で、近年、ドイツのオットー・リーガーOtto Riegerが品種改良を進め発表した、緋赤(ひせき)色の一重咲きや桃色の八重咲きなど、一連のリーガース・ベゴニアもこの系統に属し、日本でも秋から早春の鉢花の主力品種として栽培される。
[植村猶行 2020年2月17日]
比較的光量の少ない所でも育つ。また総じて寒さに弱いものが多く、冬は温室かフレーム内で保護する必要がある。用土は排水、水もちがよく有機質に富んだ清潔なものが望ましい。灌水(かんすい)は、鉢土の表面が白く乾いたらたっぷりとする。ネマトーダ(線虫類)に冒されやすいため、庭土など汚染のおそれのある土は使わないか、消毒してから用いるようにする。気温が20℃前後になる春先と秋口は、かならずうどんこ病が発生するので、早めに薬剤を散布する。繁殖は挿木、株分け、実生(みしょう)など、系統によって異なる。
[植村猶行 2020年2月17日]
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ベゴニア
亜熱帯に広く分布するシュウカイドウ科の多年草または小低木。多く見積もれば2000種以上があるとされる。花や葉を観賞するため,多数の園芸種も作られ,多くは鉢植にして温室で栽培される。栽培種は園芸的に,木立性ベゴニア,根茎性ベゴニア,球根性ベゴニアの3つに大別されるほか,主要な交雑種として四季咲ベゴニア,球根ベゴニア,エラチオール・ベゴニア,冬咲ベゴニア(クリスマス・ベゴニアとも),観葉性のレックス・ベゴニアなどがある。四季咲ベゴニアは,ブラジル原産の数種から生まれたもので,多汁質の茎に広卵形の光沢ある葉をつけ,白・赤・桃色の小さな花を多くつける。花壇向きで,八重咲もある。球根ベゴニアは,南米のアンデス高地原産の数種に由来し,花型や性状により,大輪・小輪,一重・八重,花弁の重ねや切込みの様子,直立性・懸垂性などによって分類される。花色は赤・白・桃・黄,またはそれらの2色の組合せで覆輪模様となるものもある。初夏〜秋に開花する。エラチオール・ベゴニアは,球根ベゴニアとベゴニア・ソコトラナ(ハスノハベゴニア)との交雑で生まれた園芸品種群で,いわゆる〈リーガース・ベゴニア〉もこの一群である。径5〜10cmの,花色も豊富な中輪性の花をつける。八重咲もあり,鉢植として周年生産されている。冬咲ベゴニアは,主としてベゴニア・ソコトラナとベゴニア・ドレゲイとの交雑により生まれた園芸品種群で,クリスマス・ベゴニアとも呼ばれるように,冬期の重要な鉢物になっている。赤・白・桃などの花色をもち,小輪多花性。レックス・ベゴニアは,インドのアッサム地方原産のベゴニア・レックス(オオバベゴニア)を基にアジア産の美葉種との交雑により生まれた。大葉系,中葉系,小葉系に大別されるが,それぞれ葉の形や色,斑紋など変化に富んでいる。レックス・ベゴニアではないが,よく栽培される観葉性の種にアイアンクロスがある。中国南部からヒマラヤにかけて原産する根茎性ベゴニアで,明緑色・広卵形の大きな葉の表面はちりめん状で,赤い短毛のはえた細かい突起があり,黒褐色の鉄十字を思わせる模様が入って特徴的である。また,上記の主要園芸品種群とは別に,個々に作られた交雑品種も多い。なお,これらの系統とは別に,江戸時代中国からもたらされたシュウカイドウが栽培されている。
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ベゴニア
Begonia; begonia
シュウカイドウ科の多年草または半低木の1属。オーストラリアを除く熱帯,亜熱帯に分布し,約 900種が知られるが温室の草花,鉢植,花壇用など観賞植物として広く栽培され,園芸品種は数千に及ぶ。茎は直立またはつる状,太い根茎や塊根,ときに球根状のものなどがある。托葉をもつ葉は互生し,全縁で左右ははなはだしく不同である。雌雄同株で,腋生の集散花序に,4弁の雄花と5弁の雌花をつける。花の色は白,淡紅,赤,黄など多種ある。日本には八重山諸島にコウトウシュウカイドウ,マルヤマシュウカイドウが自生する。観賞用として,中国,マレー原産で8~9月頃淡紅色の花をつけるシュウカイドウ (秋海棠),アッサム原産の観葉種オオバベゴニアなどがよく知られている。
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ベゴニア
〘名〙 (begonia) シュウカイドウ科シュウカイドウの学名でこの属に含まれる植物の総称。多年草または小低木。世界の熱帯から亜熱帯にかけて約九〇〇種が知られる。葉や花を観賞するため鉢植えにして温室栽培されるものが多い。葉は左右不同、表面に斑紋や縞があり裏はしばしば赤や紫色を帯びる。雌雄同株。花は白・赤・黄・紫色など色彩に富み、雌花は四~六花被、雄花は大小の四花被からなる。果実には翼がある。《季・夏》
※風俗画報‐三五〇号(1906)漫録「ウォーターヒヤシンス、ベコニヤなどいふ西洋草花」
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デジタル大辞泉
「ベゴニア」の意味・読み・例文・類語
ベゴニア(〈ラテン〉Begonia)
シュウカイドウ科シュウカイドウ属の植物の総称。多年草または小低木で、熱帯に多く産し、種類も多い。茎や葉は多肉質で柔らかい。葉は卵形や心臓形で裏面が赤や紫色。花は4弁および5弁花で、白・桃・赤・黄色など。観賞用とし、園芸種は非常に多い。《季 夏》
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ベゴニア【begonia】
シュウカイドウ科シュウカイドウ属Begoniaに属する耐寒性のない多年草の総称。熱帯域を中心に2000種以上が分布している。それらから観賞用に栽培化された種は200種を超え,また種間交雑による品種改良も盛んで,美しい花や変わった葉をもつ多数の園芸品種がつくり出されている。この園芸的に栽培されるシュウカイドウ属の植物を,その属名から,一般にはベゴニアと総称している。 ベゴニアは多漿(たしよう)質の草本または半低木で,茎は直立するもの,つるとなって他物にからまるもの,あるいは太い根茎となって地面をはうもの,地下に塊茎をもつものなどいろいろである。
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