ベゴニア(英語表記)begonia
Begonia

精選版 日本国語大辞典 「ベゴニア」の意味・読み・例文・類語

ベゴニア

〘名〙 (begonia) シュウカイドウ科シュウカイドウの学名でこの属に含まれる植物の総称。多年草または小低木。世界の熱帯から亜熱帯にかけて約九〇〇種が知られる。葉や花を観賞するため鉢植えにして温室栽培されるものが多い。葉は左右不同、表面に斑紋や縞があり裏はしばしば赤や紫色を帯びる。雌雄同株。花は白・赤・黄・紫色など色彩に富み、雌花は四~六花被、雄花は大小の四花被からなる。果実には翼がある。《季・夏》
風俗画報‐三五〇号(1906)漫録「ウォーターヒヤシンス、ベコニヤなどいふ西洋草花」

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デジタル大辞泉 「ベゴニア」の意味・読み・例文・類語

ベゴニア(〈ラテン〉Begonia)

シュウカイドウ科シュウカイドウ属の植物の総称。多年草または小低木で、熱帯に多く産し、種類も多い。茎や葉は多肉質で柔らかい。葉は卵形や心臓形で裏面が赤や紫色。花は4弁および5弁花で、白・桃・赤・黄色など。観賞用とし、園芸種は非常に多い。 夏》

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改訂新版 世界大百科事典 「ベゴニア」の意味・わかりやすい解説

ベゴニア
begonia
Begonia

シュウカイドウ科シュウカイドウ属Begoniaに属する耐寒性のない多年草の総称。熱帯域を中心に2000種以上が分布している。それらから観賞用に栽培化された種は200種を超え,また種間交雑による品種改良も盛んで,美しい花や変わった葉をもつ多数の園芸品種がつくり出されている。この園芸的に栽培されるシュウカイドウ属の植物を,その属名から,一般にはベゴニアと総称している。

 ベゴニアは多漿(たしよう)質の草本または半低木で,茎は直立するもの,つるとなって他物にからまるもの,あるいは太い根茎となって地面をはうもの,地下に塊茎をもつものなどいろいろである。葉の形や模様,色彩,毛の有無なども種ごとに違っているが,葉の形が主脈を中心に左右が相称でなくゆがんでいることは,シュウカイドウ属に共通した特徴である。雌雄同株異花で,ふつう,茎頂に近い葉腋(ようえき)から花梗を出し,その先は3~7回二叉(にさ)分岐を繰り返し,雄花を咲き進め,花序の頂端部になると雌花だけの花序となってぶら下がる。ベゴニアには多種多様な種があり,それをどのような群にまとめるかはいろいろな意見がある。観賞目的からは,斑点や斑紋のある葉を観賞する観葉植物と,大きくてきれいな花をみるものの2群に分けられるが,前者にも花は咲くし,後者の葉にも捨てがたい美しさをもつものがある。

園芸上は,茎の形や性質から,直立した地上茎をもつ木立性,太い根茎をもつ根茎性,地下に塊茎をもつ球根性に大別できる。しかし,ベゴニアは近縁な種間で雑種が容易にできるだけでなく,これらの群の間でも雑種が生じ,中間的な形質をもつものもあるので,必ずしも常にはっきり区別できるとは限らない。

(1)木立性ベゴニア 茎がしっかりして,一見,木質化したように見えるものや,やや多汁質の茎が多数,叢生(そうせい)するもの,茎が太って多肉質になるもの,あるいはつる性になるものなどさまざまなものがある。最近はレノール・オリビエ,オレンジ・ルブラ,かがり火,青鶴,ミセス・ハシモトなど四季咲き性の強い園芸品種が多数市販され,それらはブラジル原産のコッキネアB.coccineaやディクロアB.dichroa,マクラータB.maculata,コラリーナB.corallinaなどを基に育成されたものである。ふつうは茎の先端に近い葉腋から大型の花序を出し,花も美しい。明るい場所(2万lx前後)を好むものが多い。繁殖は挿芽が中心で,まれに葉挿しのできる種や品種もある。園芸的には,ブラジルで1821年に発見されたベゴニア・センパフローレンスB.semperflorensを基に,他種との交雑によって品種改良が進められた四季咲きベゴニアがよく普及している。直射日光にも強く,日本では夏から秋の花壇で一年草的に取り扱われることが多いが,元来は多年草で,気温が10℃以上であれば次々と茎頂部から花茎を出し,周年開花をする。草丈は15~40cmと比較的小型で,花壇だけでなく鉢物としても広く利用されている。繁殖はふつう播種によるが,挿芽や株分けもできる。

(2)根茎性ベゴニア 通常,節間の詰まった太い茎が地表を横にはうもので,中には根茎が立ち上がるものや半木立状になるものもある。葉の色彩や模様の美しいものが多く,室内の弱光下でもよく育つものが多いため,室内観葉植物として利用される。主として冬から春に,先端近くの葉腋から花茎を抽出して,集散花序に花をつける。レックス・ベゴニア類は,根茎性のなかではもっとも改良の進んだもので,広く栽培されるが,現在ではレックスよりも他の根茎性ベゴニアの方が多くの人々に栽培されている。インドのアッサム地方原産のベゴニア・レックスB.rexを基本に,いくつもの種が交配されて成立した品種群である。葉形や大きさ,色彩や模様の変化幅もたいへん広い。元来はヒマラヤのやや高地産の種であるから,凍らさなければ越冬できる。主として葉を観賞するが,秋~冬には白~桃色の花をつけるので花も楽しめる。品種数は膨大で,日本だけでも400品種にのぼる。レックス・ベゴニアによく似ていて,葉に放射状の脈に沿って濃い赤紫色の斑が入るアイアン・クロスB.masoniana(英名iron cross begonia)や小型で葉脈に沿って黒色模様のあるボウェレー・ニグラマルガB.bowerae var.nigramargaなどを,園芸店でよくみかける。根茎性,とくにレックス・ベゴニア類の繁殖は,主として葉挿しにするが,根茎挿しや株分けもされる。

(3)球根性ベゴニア シュウカイドウ属ではもっとも北まで分布し耐寒性のあるシュウカイドウのように,地下にいも状の塊茎のあるものや,それらの交配雑種起源のベゴニアが所属し,多くは美しい花をつける。この群で有名なものは,南アメリカのアンデス山系に原産する球根性ベゴニア数種の相互交配によって育成された球根ベゴニアで,ベゴニア類ではもっとも多彩で美しい夏咲きの品種群である。大輪の八重,一重,中小輪多花性などの花形や,青色系以外はほとんどそろった花の色でも変化に富む群で,生育形からは,茎が立ったものと垂下するものに分けられる。ただ,原種が熱帯高地産であるため,高温にも低温にも弱く,日本では高冷地や北海道以外では夏の気温が高すぎて,夏季の花を十分に楽しめない。球根性ベゴニア類は種子繁殖のほか,塊茎の分球,葉挿し,挿芽などの栄養繁殖を行う。

 以上の3群のほかに,人工的に種間交雑された不稔性の園芸品種に次の二つの大きなグループがある。これらの繁殖はふつう葉挿しと挿芽による。

(4)冬咲きベゴニア アラビア海ソコトラ島産の球根性ベゴニア・ソコトラーナB.socotranaと南アフリカ産の球根性ベゴニア・ドレーゲイB.dregeiとの交雑から改良されたもの。1891年に最初の品種が発表されて以来,欧米で品種改良が進められ,その開花時期からクリスマス・ベゴニア(英名Christmas begonia)とも呼ばれ,最近では日本でも冬の花鉢として販売されるようになった。

(5)エラチオール・ベゴニア ベゴニア・ソコトラーナと球根ベゴニアの園芸品種との交配から,1880年代にイギリスで育成されたものが最初で,一重または八重,半八重などの比較的大型の花を秋から春まで長期間にわたって開花する。近年,ドイツのオットー・リーガルが改良育成した品種群は,とくにリーガース・ベゴニア(英名Rieger's begonia)と呼ばれ,温度や日長を調節して周年開花させる技術の開発とともに,鉢物として世界中で広く栽培され,その消費量は鉢花の女王と言われたシクラメンを上回るようになった。またオランダの農業大学でもたくさんの優れた品種が育成され,日本にも輸入されて,営利栽培されている。

ベゴニア類はその原産地の環境がさまざまで,いちがいには言えないが,夏の強光(直射日光)に当てると葉焼けを起こすものが多い。なかには四季咲きベゴニアや木立性ベゴニアのリッチモンデンシスのように夏の直射光に平気なものもある。またレックス・ベゴニアや根茎性ベゴニアの丈夫なものは2~3℃でも枯死することはないが,寒さに弱いものが多く,冬は室内かフレーム内で保護することが必要である。球根ベゴニアは,10~25℃が適温で,10℃以下になると休眠し,球根は1~4℃で貯蔵する。ベゴニア類は一般に,15~25℃でよく生育する。また,レックス・ベゴニアをはじめ根茎性の仲間は,とくに空中湿度の高いことを必要とし,用土は水はけと水もちのよい有機質を豊富に含んだものがよい。うどんこ病やネマトーダの害を受けやすいから,消毒に注意する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベゴニア」の意味・わかりやすい解説

ベゴニア
べごにあ
[学] Begonia

シュウカイドウ科シュウカイドウ属(ベゴニア属)の総称。草本または半低木。オーストラリアを除く世界の熱帯から亜熱帯に広く分布し、1400種以上が知られる。茎は直立するもの、つるとなって他物に絡まるもののほか、太い根茎となって地面をはうもの、地下に塊茎があるものなどがある。葉の形や色彩、模様、大きさ、毛の有無や色など変異が多い。雌雄同株。普通、茎頂に近い葉腋(ようえき)から花柄を出し、その先が3~7回、二又分岐を繰り返し、雄花を咲き進め、最後に雌花の大きな花房となって垂れ下がる。雄花は大きな丸形の2弁と小さな杓子(しゃくし)形の2弁からなり、雄しべは多数。雌花は大小不同の5弁からなり、雌しべは1本。子房は下位で、普通3室であるが、まれに2~5室、3枚の翼状突起があり、中に多数の胚珠(はいしゅ)がある。柱頭は3裂し、おのおのさらに2裂して先がねじれるか鶏冠状になる。

[植村猶行 2020年2月17日]

系統品種

大きな属であり、80余節に分類されるが、園芸上は茎の形や性質、根の形態から次の8系統に分類されている。

[植村猶行 2020年2月17日]

木立ち性ベゴニア

茎がまっすぐに立ち上がって伸びるグループで、茎の形や出方により、さらに矢竹型、叢生(そうせい)型、多肉茎型、つる性型に分けられる。

[植村猶行 2020年2月17日]

根茎性ベゴニア

太く多汁質で節間の詰まった根茎が地面をはって広がるグループで、本属のなかではもっとも種類が多い。根茎の形によって横走根茎型、直立根茎型、半木立ち型、地中茎型に分けられる。葉の美しいものが多いので、観葉ベゴニアと総称することもある。大部分は冬から早春に開花し、比較的弱光線にも耐えるが、空中温度が高い所でよく育つ。

[植村猶行 2020年2月17日]

球根性ベゴニア

地下に球根または塊茎がある原種、およびそれら原種どうしの単純な交配種であるが、比較的種類は少ない。

[植村猶行 2020年2月17日]

球根ベゴニア

南アメリカのアンデス山系に野生する球根性ベゴニアであるボリビエンシスB. boliviensis A.DC.を中心に数種の原種を複雑に交配して育成された、多彩で美しい夏咲きベゴニアで、地中に塊茎がある。茎が立ち上がって伸びるスタンド型と、茎が垂れ下がるハンギング型とに分かれる。花色が豊富で美しいものが多い。

[植村猶行 2020年2月17日]

レックスベゴニア

インドのアッサム地方原産の根茎性ベゴニアであるレックスB. rex Putz.をもとに、葉の美しいいくつかの原種を交配して育成されたもので、花は秋から冬にかけ観賞できる。栽培品種は1000種に近い。

[植村猶行 2020年2月17日]

四季咲きベゴニア

木立ち性ベゴニアの叢生型に属するブラジル原産のセンパフローレンスB. semperflorens Link et Ottoをもとに改良された矮性(わいせい)種で、高さ15~40センチメートル。緑葉種と銅葉種に分かれ、白、淡黄色の斑(ふ)入り葉種もある。10℃以上の所では四季を通じて株を覆って咲き続けるので、花壇や鉢植え、プランター用として、世界中で数百種が栽培される。

[植村猶行 2020年2月17日]

冬咲きベゴニア

英名をクリスマス・ベゴニアChristmas begoniaといい、クリスマスを中心に11月ころから春にかけて咲く、人工育成種である。

[植村猶行 2020年2月17日]

エラチオール・ベゴニア

elatior begonia. ソコトラーナと球根ベゴニアの園芸品種を交雑して作出された人工育成種で、近年、ドイツのオットー・リーガーOtto Riegerが品種改良を進め発表した、緋赤(ひせき)色の一重咲きや桃色の八重咲きなど、一連のリーガース・ベゴニアもこの系統に属し、日本でも秋から早春の鉢花の主力品種として栽培される。

[植村猶行 2020年2月17日]

栽培

比較的光量の少ない所でも育つ。また総じて寒さに弱いものが多く、冬は温室かフレーム内で保護する必要がある。用土は排水、水もちがよく有機質に富んだ清潔なものが望ましい。灌水(かんすい)は、鉢土の表面が白く乾いたらたっぷりとする。ネマトーダ(線虫類)に冒されやすいため、庭土など汚染のおそれのある土は使わないか、消毒してから用いるようにする。気温が20℃前後になる春先と秋口は、かならずうどんこ病が発生するので、早めに薬剤を散布する。繁殖は挿木、株分け、実生(みしょう)など、系統によって異なる。

[植村猶行 2020年2月17日]


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百科事典マイペディア 「ベゴニア」の意味・わかりやすい解説

ベゴニア

亜熱帯に広く分布するシュウカイドウ科の多年草または小低木。多く見積もれば2000種以上があるとされる。花や葉を観賞するため,多数の園芸種も作られ,多くは鉢植にして温室で栽培される。栽培種は園芸的に,木立性ベゴニア,根茎性ベゴニア,球根性ベゴニアの3つに大別されるほか,主要な交雑種として四季咲ベゴニア,球根ベゴニア,エラチオール・ベゴニア,冬咲ベゴニア(クリスマス・ベゴニアとも),観葉性のレックス・ベゴニアなどがある。四季咲ベゴニアは,ブラジル原産の数種から生まれたもので,多汁質の茎に広卵形の光沢ある葉をつけ,白・赤・桃色の小さな花を多くつける。花壇向きで,八重咲もある。球根ベゴニアは,南米のアンデス高地原産の数種に由来し,花型や性状により,大輪・小輪,一重・八重,花弁の重ねや切込みの様子,直立性・懸垂性などによって分類される。花色は赤・白・桃・黄,またはそれらの2色の組合せで覆輪模様となるものもある。初夏〜秋に開花する。エラチオール・ベゴニアは,球根ベゴニアとベゴニア・ソコトラナ(ハスノハベゴニア)との交雑で生まれた園芸品種群で,いわゆる〈リーガース・ベゴニア〉もこの一群である。径5〜10cmの,花色も豊富な中輪性の花をつける。八重咲もあり,鉢植として周年生産されている。冬咲ベゴニアは,主としてベゴニア・ソコトラナとベゴニア・ドレゲイとの交雑により生まれた園芸品種群で,クリスマス・ベゴニアとも呼ばれるように,冬期の重要な鉢物になっている。赤・白・桃などの花色をもち,小輪多花性。レックス・ベゴニアは,インドのアッサム地方原産のベゴニア・レックス(オオバベゴニア)を基にアジア産の美葉種との交雑により生まれた。大葉系,中葉系,小葉系に大別されるが,それぞれ葉の形や色,斑紋など変化に富んでいる。レックス・ベゴニアではないが,よく栽培される観葉性の種にアイアンクロスがある。中国南部からヒマラヤにかけて原産する根茎性ベゴニアで,明緑色・広卵形の大きな葉の表面はちりめん状で,赤い短毛のはえた細かい突起があり,黒褐色の鉄十字を思わせる模様が入って特徴的である。また,上記の主要園芸品種群とは別に,個々に作られた交雑品種も多い。なお,これらの系統とは別に,江戸時代中国からもたらされたシュウカイドウが栽培されている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベゴニア」の意味・わかりやすい解説

ベゴニア
Begonia; begonia

シュウカイドウ科の多年草または半低木の1属。オーストラリアを除く熱帯,亜熱帯に分布し,約 900種が知られるが温室の草花,鉢植,花壇用など観賞植物として広く栽培され,園芸品種は数千に及ぶ。茎は直立またはつる状,太い根茎や塊根,ときに球根状のものなどがある。托葉をもつ葉は互生し,全縁で左右ははなはだしく不同である。雌雄同株で,腋生の集散花序に,4弁の雄花と5弁の雌花をつける。花の色は白,淡紅,赤,黄など多種ある。日本には八重山諸島にコウトウシュウカイドウ,マルヤマシュウカイドウが自生する。観賞用として,中国,マレー原産で8~9月頃淡紅色の花をつけるシュウカイドウ (秋海棠),アッサム原産の観葉種オオバベゴニアなどがよく知られている。

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