海綿鉄(読み)かいめんてつ(英語表記)sponge iron

改訂新版 世界大百科事典 「海綿鉄」の意味・わかりやすい解説

海綿鉄 (かいめんてつ)
sponge iron

酸化鉄を約1000℃以下の温度で炭素,一酸化炭素,水素炭化水素などにより,溶融させずに還元すると多孔質の固相鉄が生成する。この固相鉄を海綿鉄と呼ぶ。しかし,500~600℃の低温還元では活性な鉄が生成し,自然発火などを起こしやすく,通常は800~900℃以上の還元温度が選ばれる。用途は,屑鉄スクラップ代替を目的とした電気炉製鋼用原料,還元の進んだ原料を用いることによる燃料節約を目的とした高炉用原料,粉末冶金を目的とした鉄粉用に大別できる。製鋼原料,高炉原料として用いる海綿鉄の原料となる鉄鉱石粉などにはシリカSiO2,アルミナAl2O3などの不純物が多少含まれている場合が多いが,溶融によりスラグとして除去されるので問題はない。しかし,粉末冶金に用いられる鉄粉の場合には,鉄粉をそのまま圧縮成形,焼結して製品とするため不純物を除くことが不可能なので,製鉄所での熱間圧延の際に生ずるミルスケールと呼ばれる,不純物をほとんど含まない酸化スケールを原料とすることが多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「海綿鉄」の意味・わかりやすい解説

海綿鉄
かいめんてつ
sponge iron

品位の酸化鉄鉱石 Fe2O3 を低温還元して得られ,酸素の抜けたところが空になった多孔質の塊状鉄をいう。溶融にいたらないため炭素,硫黄吸収が少く鉄純度が高い。還元剤には高純度の炭素粉,一酸化炭素ガス,水性ガス,天然ガス,水素などが用いられ,還元温度は通常 900~1100℃,炉は回転円筒窯 (ロータリーキルン) ,シャフト炉,レトルト炉が用いられる。用途は特殊合金鋼原料,焼結用純鉄粉 (電磁石磁心用) 原料などである (→純鉄 ) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海綿鉄」の意味・わかりやすい解説

海綿鉄
かいめんてつ
sponge iron

鉄鉱石を固体状態でガス還元して得た鉄で、還元により酸素が除去され多孔質の海綿状を呈するのでこの名がある。通常1000℃以下の低温で還元されるため、他の元素はほとんど還元されず、生成鉄の純度は高い。したがって高級鋼の原料として利用される。一方、発展途上国や還元ガスの豊富な地域では、直接製鉄法により海綿鉄を製造し、製鋼用くず鉄のかわりとする製鉄法が取り上げられ、重要な鉄源となっている。

[井口泰孝]


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百科事典マイペディア 「海綿鉄」の意味・わかりやすい解説

海綿鉄【かいめんてつ】

鉄鉱石を1000℃以下の比較的低温で溶融させずに還元して得られる多孔質の海綿状の鉄。酸化鉄の占めていた空間から酸素が失われ,多孔質の塊が得られる。用途は,電気炉製鋼用原料,高炉用原料,粉末冶金に用いる鉄粉用など。

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世界大百科事典(旧版)内の海綿鉄の言及

【直接製鉄】より

…以上のように,還元剤として固体炭素を用いる場合も,ガスを用いる場合も反応条件が1200℃以下の低温であれば,生成する鉄は固相状態であり炭素の溶解もわずかである。この鉄は気孔率が高いことから海綿鉄とも呼ばれる。以上のような固相状態の鉄の製造法を一般に直接製鉄と呼んでいる。…

※「海綿鉄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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