気毒(読み)きのどく

精選版 日本国語大辞典 「気毒」の意味・読み・例文・類語

き‐の‐どく【気毒】

〘名〙 (形動) (もと、自分の心や気分にとって毒になることの意)
① 自分の心に苦痛や困惑を感じること。また、そのさま。⇔気の薬(くすり)
(イ) 気がもめたり、気がかりであったりして、腹だたしく思ったり、厭に思ったりすること。また、そのさま。
※虎寛本狂言・縄綯(室町末‐近世初)「あれも成まい、是も成るまいと申は、近来(ちかごろ)気のどくに御座るが、私は終に縄をなふた事は御座らぬ」
※浮世草子・好色一代男(1682)五「され共(ども)乗懸(のりかけ)あとさきに隔り、こころのまま咄しのならぬ事気のどく也」
(ロ) 困ってしまうこと。また、そのさま。困惑。迷惑。
※虎寛本狂言・萩大名(室町末‐近世初)「さてさて気のどくな事で御ざる。是は何によそへた物で御ざらうぞ」
※許六宛芭蕉書簡‐元祿六年(1693)一〇月九日「当冬は相手に可為物無御座候へば、俳諧も成申まじく候。広き江戸に相手のなきも気の毒に存候
(ハ) きまりの悪いこと。恥ずかしいこと。また、そのさま。
※浮世草子・浮世親仁形気(1720)一「七十にちかいおやぢ様を兄分にたのむと書きては、わしが年をむしゃうにふけたやうに沙汰せらるるも気毒(キノドク)
※人情本・仮名文章娘節用(1831‐34)後「いはれてお雪は気のどくそうに、顔をあかめて」
② 他人の不幸、苦痛、難儀などに同情して心を痛めるさま。
※虎寛本狂言・船渡聟(室町末‐近世初)「『扨々(さてさて)(それ)は気のどくな事を致いて御ざる』『イヤイヤくるしう御ざらぬ』」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二〇「多年放蕩の報しるけく、必至に困窮の体となりしを、守山友芳が笑止(キノドク)に思ひて」
③ (━する) 迷惑をかけたり、労力を使わせたりして申し訳ないと思うこと。
※良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉後「否(いい)や、玉さん、気の毒したが、僕は最早(もう)飲むまい」
[語誌]近世初期には、自分のことについていう場合が多かったが、江戸時代後期には、他人のことについていう用法勢力を増し、語義も同情・あわれみの意に変化していく。
きのどく‐が・る
〘自ラ五(四)〙
きのどく‐げ
〘形動〙
きのどく‐さ
〘名〙

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普及版 字通 「気毒」の読み・字形・画数・意味

【気毒】きどく

悪い風気。

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