比良(読み)ひら

改訂新版 世界大百科事典 「比良」の意味・わかりやすい解説

比良 (ひら)

歌枕。滋賀県大津市の旧志賀町と同市堅田との境,琵琶湖の西岸にそって南北に連なる比良山地中の高峰群。主峰武奈ヶ嶽(ぶながたけ)(1214m)。山容雄大で修験道行場である。〈比良暮雪〉は近江八景の一つ。春先に吹きおろす強風を〈比良八荒〉とよんだ。《新古今集》巻二に宮内卿の〈花さそふ比良の山風ふきにけりこぎ行く舟の跡見ゆるまで〉がある。《万葉集》巻一に見える孝徳天皇の〈比良宮〉,巻三〈比良の湊〉はこのあたりである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「比良」の意味・わかりやすい解説

比良
ひら

滋賀県中西部、大津市の一地区。現在、北比良、南比良の二集落がある。西に比良山地、東に琵琶(びわ)湖が開け、国道161号が通じ、JR湖西(こせい)線の比良駅がある。比良山の登山口として数多くの登山客が訪れる。古代には比良牧、中世には比良荘(しょう)が置かれ、湖岸は港として利用されてきた。歌枕(うたまくら)としても親しまれ、『万葉集』の「わが船は比良のみなとに……」(高市黒人(たけちのくろひと))などが著名。

高橋誠一

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