死霊(埴谷雄高の小説)(読み)しれい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「死霊(埴谷雄高の小説)」の意味・わかりやすい解説

死霊(埴谷雄高の小説)
しれい

埴谷雄高(はにやゆたか)の長編小説。1章~4章は『近代文学』1946年(昭和21)1月号~49年11月号、5章(1975.7)、6章(1981.4)、7章(1984.10)、8章(1986.9)、9章(1995.11)を『群像』に発表。1935年前後の左翼からの転向期を時代背景に、刑務所から出てきた3人の青年を中心人物として、意識が存在から完全に自由になる世界の可能性を求めて書き継がれている形而上(けいじじょう)学的、存在論的「思考実験」の小説戦後文学の幻の高峰、わが国では唯一無二の思想小説として、未完、難解であるにもかかわらず、第二次世界大戦後早くから畏怖(いふ)の念をもって語り伝えられている伝説的作品である。

[曾根博義]

『『死霊Ⅰ』『死霊Ⅱ』『死霊Ⅲ』(講談社文芸文庫)』

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