檜垣・菱垣(読み)ひがき

精選版 日本国語大辞典 「檜垣・菱垣」の意味・読み・例文・類語

ひ‐がき【檜垣・菱垣】

[1] 〘名〙
① 檜(ひのき)の薄板を網代のように編んだ垣。昔、築地(ついじ)などよりも簡便な家の外構えとしたもの。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「しばつち、あみたれじとみ、めぐりはひがき、ながや一つ、さぶらひ」
② (「いがき(斎垣)」に見たてた「いがき(囲垣)」の変化した語) 兜(かぶと)の鉢。
③ 衣服の模様の一つ。①の編み目に似たもの。
※親元日記‐寛正六年(1465)八月二二日「御すわう地白地もんにひかきをかちんに、葛のはを乱もんに、もえき御はかま」
④ 江戸・大坂間の海運に活躍した菱垣廻船の垣立の下部構造をいう語。一般廻船が大筋と五枚筋で構成する所を檜の角材で菱組の格子状にしたもの。菱垣廻船問屋所属船であることを示すための特徴的な構造。〔今西氏家舶縄墨私記(1813)〕
⑤ 「ひがきかいせん(菱垣廻船)」「ひがきぶね(菱垣船)」の略。〔和漢船用集(1766)〕
[2] (檜垣) 謡曲。三番目物。世阿彌作。観世宝生・金春・金剛喜多の各流に上演される。肥後国岩戸山に住む僧のもとに、毎日百歳近い老女が閼伽(あか)の水をくんでは訪れる。僧がその名を尋ねると、檜垣という白拍子であると名乗り回向を頼んで姿を消す。僧が庵の旧跡を尋ねると女の亡霊が現われて、昔、藤原興範(おきのり)に所望されて水をくんだ有様を再現し、白拍子としての思い出の舞をまって回向を頼む。最も秘曲とされている「三老女」の一つ。

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