楊振寧(ようしんねい)(読み)ようしんねい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「楊振寧(ようしんねい)」の意味・わかりやすい解説

楊振寧(ようしんねい)
ようしんねい / ヤンチェンニン
(1922― )

中国出身の理論物理学者。中国安徽(あんき)省生まれ。雲南大学、清華大学に学び、その後アメリカに渡ってシカゴ大学でフェルミ師事、1948年学位を得た。1949年プリンストン高等研究所所員となり、1955年からは終身所員。1960年ニューヨーク州立大学教授となり、1998年からは母校の清華大学教授。楊の名を高めたのは、李政道(りせいどう)とともに提唱した、素粒子の「弱い相互作用」に関する「パリティ非保存」の理論である(1956)。「弱い相互作用」が空間反転に対して不変であるか否かを調べた実験がひとつもないことに注目し、それをテストする実験を指摘したもので、従来の常識の枠を越えた理論であった。この理論は、1957年、実験物理学者ウーWu Chien Shiung(1912―1997)によって検証された。楊と李は「パリティに関する法則の研究」により同年ノーベル物理学賞を受賞。楊の研究分野は強磁性体統計力学素粒子論などに広く及び、1954年に定式化されたヤン‐ミルズ理論(ヤン=楊とミルズRobert L. Mills、1927―1999が考案した非可換ゲージ理論)は、弱電磁統一理論の基礎になるなど、その後の理論物理学に大きな影響を与えた。

[山崎正勝]

『林一訳『素粒子の発見――核物理学の歩み』(1968・みすず書房)』

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